自由が丘駅から北部、住宅街で、まるでイタリアのようにゆっくりとした時間が流れる地域。ゆったりとした空間に、ひっそりとお店を構える ”La Cialda(ラ・チャルダ)”。
イタリアのトスカーナ地方で親しまれている”チャルダ”という聞きなれないお菓子を取り扱っている面白いお菓子屋。どういった想いでLa Cialda(ラ・チャルダ)を始めたのかを取材した。


 

イタリア人でも知らないイタリアのお菓子

「チャルダと出会ったきっかけは、友人がイタリア旅行で、たまたまチャルダをお土産として日本に持って帰ってくれたこと。新しいもの好きの私に珍しいチャルダを紹介してくれたことが始まりでした」

見た目はゴーフルやワッフルに似ているが、サクサクっとした食感は別物。とても美味しいチャルダに興味津々の私に、友人は焼き型も買ってきたと見せてくれた。

「こんなもので焼いているのか」とさらに興味をもち、友人が現地で知り得た情報を聞き、さらに自分でもチャルダについて調査。
調べていくと、どうもチャルダは14世紀以前、イタリアのトスカーナ地方で親しまれているお菓子で、実はイタリアでも残っている地域はごく一部のみ。イタリアの方でもほとんど知らないお菓子だった。

ゴーフル、ワッフルの起源 ”チャルダ”

当時、トスカーナ地方を治めていたメディチ家が、婚礼の時に招待した貴族たちに祝い菓子として振る舞われたたチャルダ。チャルダは紋様が入った型で、挟んで焼くスタイルのお菓子。メディチ家の紋様を片方に刻み、婚姻するお嫁さんの紋様もう片方に刻み挟んで焼くことで、両家の繋がりをより強固にする意味があったそう。
そういった伝統のあるお菓子がなぜトスカーナ地方の一部にしか残っていないのか、と不思議に思い調べてみた。

当時、聖体拝領(せいたいはいりょう)のミサ聖餐(せいさん)で、キリストの体となったと言われるパンとぶどうを食していたキリスト教徒。キリスト教の宣教師たちは布教活動中、チャルダの焼き型を持って、ミサ聖餐のパンの代わりに布教活動をしていたそう。時代の流れによって、ヨーロッパの土地ごとにチャルダは形が変わっていき、日本でも広まっているゴーフルやワッフル、ウェハースに変わっていった。今では、そちらの方が有名になったが、もともとの発祥はチャルダだった。

目の前のお客様に一生懸命作ったものを届けたい想いからチャルダ専門店として飲食店を挑戦

「もともと宝飾販売員で今はIT業界なんですよ」と代表の飯田氏は語る。
飯田氏はもともと、宝飾の接客業をしていたそう。IT業界に転身した理由も、IT技術をうまく活用すれば、接客業は改善できることが多いと感じたため。

IT企業を立ち上げて、便利な仕組みは作れるようになったものの、心の中では、目の前のお客様に、一生懸命作ったものを渡したい、お客様に笑顔を届けたい、という思いが強くなり、IT企業の新規事業として飲食店を開こうと決めていたそう。

「決して飲食業界を甘くみていたわけではなく、ずっと飲食店を開こうと準備をしていました。イタリアの方でもほとんど知らないチャルダですが、実は日本でも百貨店などで取り扱われていました。取り扱われているといっても、催事などの期間限定で取り扱わられておらず、チャルダのストーリーにはほとんど触れられていませんでした。こんな奥深いお菓子を専門店として初めてみたら面白いことになるかも」とチャルダ専門店をはじめることに。

イタリアのゆっくりとした時間が自由が丘にも流れて

飲食店事業を始めるにあたり、初めは渋谷や代官山で飲食をやる予定でしたが、お菓子屋を始めるということでお菓子の街 自由が丘に出店しようと考えた。
自由が丘駅の南口方面マリ・クレール通りでフランスのイメージ。チャルダの発祥イタリアの雰囲気と違っていた。自由が丘は違うかな、っと思っていたが、北口は馴染みがなかったのでふらっと寄ってみると、住宅街で静かでゆったりとした時間が流れていた。

イタリアの方は食事の時間を大切にしてゆっくり美味しいものを食べながら、みんなでコミュニケーションする時間を大切にしている。
La Cialda(ラ・チャルダ)は、そういったコンセプトを大切にしたく、この場所はイタリアの雰囲気やコンセプトにぴったりだった。たまたまこの土地が空いていたので、すぐ不動産屋に電話して即入居が決定。

地域住民の方々が多いエリアで人通りが多くない、普通なら飲食店は人通りの少ないところの出店は避ける。それでも出店するワケは、逆に人通りが少ないからこそ、住民の方々とコミュニケーションしながら、ゆっくりと時間を過ごしてもらい会話をしてもらえる。その中で、チャルダをじっくり味わってもらい、そのストーリーも伝えられるぴったりな場所だった。

日々の日常の中で、忘れがちなゆっくりとした時間を作る

チャルダそのものはお菓子。いわゆるパティシエの作るお菓子とは違っている。
パティシエのお菓子は、今までの長い年月をかけて得た技術や経験から作ったお菓子を作品としてお客様にご提供するもの。
一方で、チャルダは全く違うものだと思っている。チャルダは、お菓子と言いながらもお菓子ではない、どちらかというとパンに近いもの。パンは、そのままで食べることもできるが、バターやクリームを塗って食べてもらうもの。チャルダもパンと同じコンセプトなのだ。

La Cialda(ラ・チャルダ)で考えているチャルダの一つの姿は、チャルダが日々の日常の中で溶け込んでいき、パンのように食べてもらいながら会話を楽しんでもらいたい。
今の時代ではちょっと忘れがちなゆっくりとした時間をチャルダを通じて味わってもらいたいと思っている。

イタリアにこだわり過ぎず日本にあったチャルダを

チャルダの素材は、小麦粉、卵、バターと基本的なお菓子の素材で作っている。焼き型自体は、イタリアで購入できるので、たまにチャルダの焼き型を持っている人と出会うが、どの人も同じ悩み。いわゆる焼き菓子で使われる素材、焼き型もあるのに、どうしてもイタリアのあの食感のように、うまく焼けない。

イタリアの気候は、地中海性気候で比較的乾燥している。しかし、日本では冬以外は湿度が高いので、ただ焼くだけではパリッとした食感に仕上がらない。何度も何度も試行錯誤の上ようやく納得できるパリッとした食感を再現できるようになった。

店舗選びからコンセプトまでイタリアを大切にしているが、味はイタリアで作られているものを提供している訳ではない。どの食べ物でもそうだが、食べ物は現地の風土や人で作られているため、そのまま違う土地に持っていきてもその土地には合わないことが多い。親しまれるように作っている風土とか味覚とかが違うのでズレが生じるすり合わせる必要がある。

La Cialda(ラ・チャルダ)のチャルダは、日本人の生活に自然に溶け込むように味やレシピ変えたり作り方に少しずつ変化を加える。
イタリアのコンセプトやストーリーは変えずに日本の方の生活にあった形でチャルダを提供させていただけたら、そういった想いでチャルダを作っている。

日常の様々なシーンを想定して用意した2種類のチャルダ

チャルダは、ちょっとしたホームパーティのクラッカーみたいにチャルダは食べられ、おやつではなく朝ごはんや夜のおつまみとしてもチャルダは活躍する。
そういった日常の様々なシーンを想定して用意した味は2種類。
2種類の味は、お菓子のプレーンと主食を想定したチーズ。

お菓子としてのチャルダも魅力的だが、チーズチャルダと一緒にワインも飲まれるかたも多い。チーズチャルダは、スモークサーモンにもあうオリーブオイルかけてみても美味しく様々な食べ方を提案している。
La Cialda(ラ・チャルダ)で毎週木曜日にやっている夜チャルダというイベントもチャルダの食べ方の提案の場。

自由が丘の住宅街、お子様連れの方も多く昼間からお酒を提供するのもできず、かといって言葉で伝えるのも難しい。そのため、チャルダを主食のような食べ方をご提案する場として夜チャルダを催している。

日常に溶け込み大切な思い出を記憶するアルバムのような存在に

元は結婚のお祝いに使われていたチャルダ。広義の意味でブライダルだが、La Cialda(ラ・チャルダ)でも徐々にブライダルの注文を増えている。
まだまだ、チャルダもLa Cialda(ラ・チャルダ)自身も認知度が低いが、チャルダがお祝いに使われ笑顔を届けるものとして一役を担いたいと考えている。
ただ、それもチャルダを広めていくことの一要素。

美味しいは大前提にあるが、
人から人に伝わっていきながら、美味しいが笑顔になって会話を楽しむ空気感というかコンセプト自体が伝えられると良い。
チャルダがいろんな人の大切な思い出を記憶するアルバムのような存在になってくれればと思っている。

お店情報
店名:La Cialda(ラ・チャルダ)

住所:東京都目黒区自由が丘1-25-9

定休日:木曜日

営業時間: 11:00〜19:00