“木のプロフェッショナル”が生み出す新時代のチョコレート

※取材は2020年11月、新型コロナウイルス感染症対策下で行いました。

春日駅から徒歩5分。コンクリートの外壁が一際目立つ「DRYADES(ドリュアデス)」。スタイリッシュな外観とは一変、店内に入ると木のぬくもりを基調とした空間が広がる。

チョコレートを使ったスイーツを展開しているドリュアデス。木製雑貨ブランドから生まれただけあって木をモチーフにした商品が並び、味へのこだわりだけでなく見た目も他のスイーツショップとは違う独自の魅力を感じさせる。

今回お話を伺ったのは、ドリュアデスの母体であるHacoa (ハコア)のスイーツ事業部部長 江田 和史(えだ かずふみ)氏と、ドリュアデス シェフショコラティエ 斎藤 拓野(さいとう たくや)氏。

木に造詣が深いからこその視点によって生まれたブランド

ドリュアデスは、眼鏡で有名な福井県鯖江市に本社のあるHacoaという木製雑貨ブランドから生まれたチョコレートブランドだ。ドリュアデス誕生のきっかけや、他のスイーツブランドとは一線を画すユニークな商品展開の裏側などについて聞いてみた。

「もともと弊社は福井県で木製雑貨のHacoaというブランドを立ち上げ、現在全国に13店舗を展開しております。そこから誕生したチョコレートブランドがドリュアデスで、この店名はギリシャ神話の木の精が由来となっています。これまで自然の恵みである木を使ってさまざまな製品を作ってきて、木が好きでたまらない私たちが行き着いたのがカカオの木でした。さらに、その恵みであるカカオ豆や木の実を使うチョコレートに着目しようと思ったのです」

福井にある木製雑貨を取り扱う直営店でもドリュアデスの販売を行っているが、チョコレートブランドを展開するにあたって「福井にとどまらず、より感性の高い東京でやってみよう」とのことから、春日に一号店をオープン。現在は、東急プラザ渋谷店、新宿ミロード店他、全国に3店舗を展開。引き続き、東京エリアでさらに店舗数を増やす計画が進行中とのこと。

ものづくりへの強いこだわりと信念

木とチョコレート。この全く関係のないように思える2つの素材を組み合わせる発想は、どこから生まれたのだろう。ドリュアデス独自の観点や、ものづくりに対する想いを伺う。

「ドリュアデスとしては『木のあつまり』『チョコレートの森』この2つのキーワードを掲げています。また、木製雑貨ブランドから生まれたブランドだからこそのこだわりとして、世界で唯一、木製の型を使ってチョコレートを作っています」

ドリュアデスは、フィナンシェやトリュフ、ボンボンショコラなどさまざまなチョコレート菓子が揃う。そのなかでも「木の葉のタブレット」は、板チョコの表面に葉の模様が施されている。シンプルながら美しく計算された立体的な葉の模様は、職人たちの手作業によって生み出されている。

一般的に、チョコレートの型はシリコン樹脂で作られるが、「やはり我々はものづくりの会社ですから、自分たちで型作りはもちろん、デザインもしようということになりました」。と、パティシエの斎藤氏。

自然の美しさをチョコレートの表面にそのまま映し出したような、丸いシルエットのチョコレート「風景のディスク」。これは、Hacoaで販売していた木のコースターがアイデアのもととなったようだ。表面にはドライフルーツやナッツなどがトッピングされ、裏面には木の模様が施されている。

「実は最初、市販の型を使おうかとの話も出ていたんです。しかし、市販の型だと何の木かわかりづらく、本物の木に見えなかったので、自分たちで一からデザインして作ることにしました」

「木の模様にはすごくこだわっています。木のマニアというか、元々木に対して強いこだわりのあるメンバーが揃っているので、本物の木の模様にいかに近づけるかには徹底的に追求をしましたね。我々は木目をとても大事にしていて、雑貨を作る過程でも木を塗装して販売するというよりかは、木目を生かすようなかたちで作っています。ですので、チョコレートにもその木目が出るような型を作りました」

表と裏で違った表情を見せるディスクは、チョコレートの域を超えた美しい造形美が印象的。フルーツやナッツの風味はもちろん、食感や手触りまで五感で楽しめる一品だ。

「素材より、もっとおいしく」パティシエ斎藤氏の信念

ドリュアデスのシェフショコラティエを務める斎藤氏は、東京のパティスリーで修行を積んだのち、フランスへ渡って“パティスリー界のピカソ”と称されるピエール・エルメ氏のもとでさらに経験を積んだ。パリではトータル7年ほどを過ごし、ピエール・エルメの他、レストランやパン屋などさまざまな店でその腕を磨いた。

日本に帰って来たのは2018年夏。帰国後はドリュアデスのオープンに向け、準備の段階から携わり、2019年1月にドリュアデス一号店が誕生。

スイーツの本場で経験を積んだ斎藤氏に、ドリュアデスで表現したいことは?と尋ねると、「何十年とパティシエをやってきて今思うのは、『自分がおいしいと感じたものを、より多くの人へ伝えたい』ということ。その想いを、お菓子で表現できたらいいですね」といたってシンプルな言葉に、斎藤氏の飾らない真っ直ぐで心豊かな人柄を感じさせられる。

お菓子作りへのこだわりを伺うと「素材を、よりもっとおいしくすること」。自分がこれまで培ってきた経験をもとに、その感覚を信じ、おいしいお菓子をたくさんの人へ届けたい。その想いの背景に、斎藤氏ならではのパティシエという職業に対する持論があった。

「パティシエはアーティストなどといった格好良いものじゃなくて、師匠から受け継いだ技術やものの見方、発想やひらめきといったインスピレーションを次の人へと伝えていく職業だと思っています。また、私自身がフランスでたくさんのものに触れて教わったものを、この日本でたくさんの人へ届けたいんです。そのために、味のバリエーションを増やして、あらゆる人の好みにフィットさせられるような商品展開を行っています」

抹茶を使ったお菓子であれば、抹茶好きのためにとことん抹茶の風味がはっきりと出るようにこだわる。口に入れた瞬間、抹茶の上品でまろやかな味わいのなかに苦味のアクセントが引き立つ。そんな抹茶のお菓子はまさに、「素材を、よりもっとおいしくすること」と話していた斎藤氏のこだわりがそのまま表現されている。フルーツやナッツ、チーズなど使われる素材は豊富で、それぞれに素材の持ち味を生かし、香りや味わい、さらには食感までも個性豊か。

「人それぞれ好みはあるので、その人にとって本当においしいと感じていただけるお菓子を目指しています」

店舗やパッケージデザインへのこだわり

ドリュアデス本店は、木製雑貨の会社らしく木の素材が使われ、ほっとするぬくもりが感じられる空間となっている。そんな柔らかな木の印象とは反対の無骨なコンクリートを外壁には使用。スタイリッシュで都会的な外観は街のなかでも一際目を引く。

都内に3店舗を構えるドリュアデス。そのなかでも本店である春日店は、土地柄も影響し20代から40代の女性が多く来店している。そういったお客様のニーズに対応できるような商品展開にも力を入れていると江田氏は話す。

ドリュアデスは、シンプルでシックなパッケージデザインも魅力の一つ。大人の女性はもちろん男性へのギフトにも最適だ。このパッケージ、ただ見た目だけにこだわって作られているのではなく、お店のコンセプトである“木”をイメージして、どのパッケージにも葉っぱの模様を入れて「お店全体を大きな木」として表現しているのだそう。全体的に色味が統一された清潔感のある店内は、都会にいることを忘れてしまうような心地良さも感じられる。

枠にとらわれず進化し続ける今後のドリュアデス
2019年に誕生して間もないドリュアデスだが、既に都内に3店舗を展開するほど精力的に活動を行っている。しかしまだまだ進化は止まらない。

現在、春日本店にしかない厨房は小さく、チーム全員で団結して効率よく作業が行えるように広いスペースへの移転を検討している。それに伴い、オープンキッチンのようにして来店するお客様が見て楽しめるような面白みのある展開にしようと考えている。将来的にはカフェを併設してイートインできる空間へと生まれ変わる予定なのだそう。

また現在ドリュアデスは、実店舗のみならずオンラインでの注文も多く、北海道から沖縄まで店舗のない地方の利用者も多いという。今後もオンラインには力を入れていきたいと江田氏。メルマガを受信した方限定でお得なクーポン配布を考えているようなので、ぜひオンラインサイトを定期的にチェックしていただきたい。

古来より木は自然を象徴する存在として人々の側にあり続けてきた。ときに生命力の象徴として、ときには木材として建築や家具など生活するための道具を作り、またあるときには薪として燃料にしたり、寒さをしのぐために利用されてきた。そんな人々の命を守り、生活を支え続けてきた木を敬愛し、それをスイーツとして表現し続けるドリュアデスに今後も目が離せない。

[box title=”店舗情報” box_color=”#c30d23″]店名:DRYADES(ドリュアデス)春日本店

住所:東京都文京区西片1丁目2−8 BRICK BLOCK 1階

営業時間:11:00~19:00

定休日:火・水曜日
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[gmap address=”東京都文京区西片1丁目2−8 BRICK BLOCK 1階”]

kanmi
3時のおやつはかかせない、甘党フリーライター。好物はクラブハリエのバームクーヘン。毎日がほんのりとあたたかくなるような文書をお届けします。

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