まだ誰も出会ったことない“美味しい”を

奈良県大和郡山市にあるKANE FACTORY(ケインファクトリー)は、イギリスの伝統菓子“リッチフルーツケーキ”の専門店。生地の中にたっぷり詰まったドライフルーツ、お酒の風味とスパイスを適度に効かせた、ちょっと大人な味だ。

ケインファクトリーのオーナー兼パティシエでもある法貴 貫志郎(ほうき かんしろう)氏。伝統レシピを大切に、新たな挑戦も欠かさないからこそ、唯一無二のお菓子が誕生する。そんなケインファクトリーの、“スタンダードを極めた先にあった全く新しいお菓子”たちをご紹介する。

ちょっと大人なお菓子「英国式フルーツケーキ」

まずご紹介するのはケインファクトリーの看板商品、英国式フルーツケーキ。フルーツケーキのこだわり、そして美味しい食べ方などについて伺った。

「伝統的なイギリスのフルーツケーキのレシピを基本に、少しアレンジを加えて誕生したものが、ケインファクトリーの英国式フルーツケーキです。名前に“英国式”と敢えてつけたのは、イギリスの伝統を尊重する気持ちを表したかったから。ケインファクトリーで販売するにあたり、選ぶ材料や作り方などを少し替えてはいますが、根本にあるのはトラディショナル(伝統的)です。」

ケインファクトリーのフルーツケーキには、伝統レシピと同じように8種類のドライフルーツが入っている。そこへ新しくナッツを2種類、保存料の代わりにレモンも加えた。
素材選びには絶対妥協しない法貴氏。選ぶものは全て無添加、無着色。安心、安全なもので作ることをモットーとしている。

「ナッツはボリューム感を増してくれるだけでなく、食感もプラスできます。レモンは、広島県の『しまなみレモン』を選びました。『広島県特別栽培』にも認定される”広島ブランド“のレモンで、無添加、無着色と安心です。本来、定番のレシピにはオレンジが入っています。しかし、日本で無添加、無着色のオレンジを手に入れるのはとても難しい。そんな中、しまなみレモンさんと出会い「これだ!」と思いました。」

英国式フルーツケーキ、いわゆる”リッチ“フルーツケーキの特徴は、なんといってもたっぷりのドライフルーツの量。ケーキの半分以上がドライフルーツとナッツなのだという。生地に使う小麦には、国産有機を選び、甘味はこっくり濃厚な三温糖、そしてスパイスもほんのり効かせる。
食べ応え満点のケーキは、驚いたことに、完成までには2ヶ月もかかるという。

「まず、ドライフルーツをラム酒に1ヶ月漬け込みます。ラム酒がたっぷりと染み込んだドライフルーツを生地とともに焼き上げ、また1ヶ月の間熟成させます。この熟成期間に、ドライフルーツの味や風味がパウンド生地にゆっくりと染み込んで行きます。英国式フルーツケーキは、ドライフルーツ、アルコール、スパイス、ナッツ、これら全てが合わさることで、特徴的な”大人な味“へと仕上がるのです。」

ウィスキーと一緒に嗜むもよし、夏にはバニラアイスを添えることでさっぱり食べられるのだと法貴氏おすすめの食べ方を教えてくれた。

香り引き立つ「チョコレートフルーツケーキ」

定番のフルーツケーキの他に、チョコレートを生地にたっぷり練りこんだフルーツケーキもある。チョコレートは、京都の老舗店『Dari K(ダリケー)』のもの。イギリスのフルーツケーキ専門店には、いくつもの種類のフルーツケーキがあり、その中にチョコレートを使ったフルーツケーキもあるそうだ。

チョコレートは、温度変化にとても敏感な素材。生地に練り込む量が多くなるほど、繊細に扱う必要がある。ケインファクトリーのチョコレートフルーツケーキには、たっぷりの量のチョコレートが練りこまれていて、型に生地を流しこむ作業はまさに時間との勝負。作業工程の全てにおいてベストなタイミングを見極めるには、幾度の試行錯誤が繰り返された。
生地にチョコレートを練りこんだケーキは他にもあるだろう。しかし、生地のほとんどがまるでチョコレートのように濃厚で、それでいてドライフルーツまでたっぷりの量入っているケーキは、日本中探してもケインファクトリーだけだろう。

「以前はコートジボワール産のフェアトレードのチョコレートを使っていました。パリに住む友人が送ってくれていたのですが手に入らなくなってしまい、新たに探していたところ、ダリケーのチョコレートに出会ったのです。」

ダリケーは、インドネシアにある農園と直接契約し、栽培から製造までの全てを自社で行うチョコレート専門店。生産から廃棄まで追跡可能なトレーサビリティも実現している。安心、安全な点においても法貴氏の厳しい素材選びの条件をクリアしている。

「ダリケーのチョコレートは、味がとてもフルーティなんです。香りも風味も圧倒的に良い、本物の感性が宿るチョコレートです。」

ダリケーのチョコレートには、カカオ独特のビターなコクはもちろんのこと、フルーティーな味わいがあり、後味はものすごくさっぱりしている。

しかしながら、あまり素材にこだわると原価が上がってしまうのでは?との質問に対し、「原価よりも、品質を大切にしたい」と法貴氏は答える。

こちらのチョコレートフルーツケーキ、おすすめの食べ方は「ブランデーなどお酒と一緒に楽しんでほしい」とのこと。食事後のデザートにぴったりだ。

季節ごとの味を楽しむ 限定フルーツケーキ

ケインファクトリーでは、春(4月から6月まで)と、夏(7月から9月まで)に、それぞれ季節限定のフルーツケーキが登場する。春は、クランベリーのフルーツケーキ。甘酸っぱいクランベリーがフルーツケーキとよく合い、程よいアクセントとなる。

また夏になると、八朔を使ったフルーツケーキが姿を見せる。八朔の酸味、そして苦味。この苦味こそ、夏にやや重たく感じてしまうケーキに、ぴりっとしたテイストを加えてくれるからして格好の素材なのだ。

「使う八朔は、奈良の葛城山で作られる無農薬のもの。それをピールにしてケーキと一緒に焼き上げます。八朔は、グレープフルーツと比べて苦味が強いのです。しかし、八朔の方が皮が薄くてケーキに入れた時にとても繊細な存在感を魅せてくれます。春は甘酸っぱさを、夏はぴりっと程よい苦味を。この2つを楽しんで下さい。」

この2つのほか、秋には栗のフルーツケーキ、冬には柿フルーツケーキも登場する。

食感も楽しい新商品「PariKari(パリカリ)」


「幅広い年代の方に食べてもらいたい」「プレゼントにも選んでもらえるように、日持ちのするお菓子を作りたい」そんな法貴氏の想いから新たに誕生した、PariKari(パリカリ)。佇まいはまるでクッキー、けれど全く新しい感覚を味わえる不思議なお菓子だ。食べるとすっと口で溶けて、ナッツの香りがふわっと広がり、思わずクセになってしまいそう。

「パリカリは、南フランスの郷土菓子がベースとなっています。フルーツケーキにはたっぷりのお酒を効かせているので、年齢を問わずに楽しめるお菓子をと思い、辿り着いたのがパリカリです。紅茶と一緒に召し上がってみて下さい。」

食べた時の「パリッカリッ」となんとも楽しい食感が、名前の由来になったのだとか。
こちらのパリカリ、本場レシピではナッツのみを使うそうだが、法貴氏はさらにココナッツやピスタチオを加え、より風味や食感を楽しめるよう工夫した。

「このお菓子はとても繊細で、南フランスの人たちですらあまり作らないと聞きました。焼きのタイミングは卵白が膨らんでいる間でなくてはいけないとか、品質を一定に保ちながら仕上げるのにもとても苦労します。湿気にもとても弱く、湿度の高い日本ではすぐに粘っとなってしまいます。密封性の高いパッケージにするなど、品質を保てるように管理しなければなりません。」

本場のレシピや伝統を大切に想いながらも、法貴氏らしさを忘れないお菓子作り。そこには、まだ誰も見たことのない、“新しい美味しさ”を見つけることができる。そんなお菓子に出会えるケインファクトリー、ぜひ一度足を運んでみてはいかがだろうか。

お店情報
店名:ケインファクトリー くすの木店

住所: 奈良県大和郡山市南郡山町464−2

定休日:火曜、水曜、木曜、日曜

営業時間:11時00分~17時00分

kanmi
3時のおやつはかかせない、甘党フリーライター。好物はクラブハリエのバームクーヘン。毎日がほんのりとあたたかくなるような文書をお届けします。