立ち止まって、ゆっくりとした時間を。地元ファンに愛される、焼き菓子屋さん”やまねフランス”

東京 渋谷から西、池ノ上駅から少し歩いたところにある小さなお菓子屋”やまねフランス”。大きな窓からはおいしそうな香りを漂わせるお菓子が陳列される。

やまねフランスは、地元ファンに愛されるローカルスイーツの代表とも言えるお菓子屋。開業当初は、週末土曜だけ開店していたお菓子屋には毎週行列ができるほどの人気店。

今回は、これだけ行列のできるやまねフランスの創業ストーリーを追ってみた。

母から自然と学んだ料理の基本

「お菓子作りを昔からやっていたわけではなく、料理好きの母に一番影響を受けたことが大きかったです。生活のあらゆることは全部母から学んだ感じでした。自然に手が動くのは、野菜の切り方とかも、気づくとちゃんと切れてるみたいなのは、全部母からの教えですね。」そう語るのはやまねフランスの店主 山根 氏。

「小さい頃は、編み物とかミシンとかスパルタ教育でしたが、母から生活のあれこれを学んでいました。そういった中で、母が作らないものを自分も作りたいと思ったものが結果的にお菓子だったということもあります。」

仕事の気分転換にお菓子作りを

「学生時代にはお菓子作りはほとんどしていなかったのですが、社会人になって、仕事が煮詰まったときに、ストレス発散にというか、会社の休みの時は、ひたすら材料を買い込んでお菓子をずっと焼いている感じでした。」

「料理もそれなりにしていたのですが、なんでお菓子だったのかはよくわかっていないです。シンプルにお菓子を食べるのが好きだったんじゃないかなっと思っています。」

「当時は趣味でお菓子を作っていましたが、今は仕事として毎日お菓子を作っていることが楽しくてしょうがないという感じです。」

寿司カフェにお菓子を卸すことや友人からの評価から自信をつける

「もともとお菓子作りは趣味として考えていました。お菓子屋をやろうと考えていませんでしたが、知り合いのお寿司屋をきっかけに徐々に気持ちが変わっていきました。」

「友人といったお寿司屋は、来年からカフェを日中に始めようとしていました。カフェで提供する予定のお菓子を仕入れたいという話から、自分のお菓子作りの話を友人から紹介されました。」

「カフェに卸す前から、小さいイベントとかには出ていました。イベントで作ったお菓子の残りを週明けに会社に持って行ってみんなが”美味しい、美味しい”と言ってくれていました。お寿司屋がきっかけで、カフェに卸すこともでき、自分でも”美味しいのかも?”と思うようになってきました。」

「でも、当時はあまり信じてはいけないっと思っていました。手作りで作った時の”美味しい”というのと、販売するものとして食べたものの”美味しい”は全然違います。なので、そこはみんなの言うことに過信してはいけないと思っていました。」

「でも、実際にイベントで販売した時に、その後に買ってくれた人が戻ってきて”美味しかったから”と言って、全種類買ってくれたりすると、”うれしい!”って気持ちになるじゃないですか。だから、そういった実感していった体験の中で、徐々に自信がついていきました。」

お客さんに直接気持ちが届くお菓子屋の仕事の楽しみに気づいて

「心のどこかでは、自分のお店を持ちたいという気持ちはカフェに卸す前からあったのだと思います。ただ、自分は会社員だし、今の広告の仕事も好きなので、会社をやめるっということは全然考えていませんでした。」

「でも、お店をやりたいという気持ちが、日に日に増していきました。それで、カフェに卸した時に、お菓子本来の楽しみではなく広告の仕事と変わらないことをしている、と気づいたのです。」

「広告の場合は、誰が見てるかわからないし、見られていないことはざらにあって、届いている人の顔が見えません。けれど、お菓子の場合は、目の前で食べてくれて、お客さんが来てくれて、買ってくれて”美味しい”と言ってくれる。これって、ダイレクトに気持ちが届くじゃないですか。その違いがあるから、イベントとかでお菓子を売ることが楽しいっと思ったのですが、カフェに卸すのって、結局人伝いにに”美味しいっていうお客さんがいたよ”みたいな感じです。”すぐに売り切れちゃったよ”とか聞くと、もちろんうれしいのですが、やっぱり目の前で笑顔で”美味しいよ”って言ってくれるのとは違っていました。それで、”これは全然、卸してても楽しくないな”って思うようになりました。」

「多分、その時点で、もうただお菓子を作るだけじゃ満足できなくなってたんですよね。初めは、お菓子をひたすら作って、ストレス解消っていう感じで作っていたんですけど、”美味しい”っていってくれる人の顔込みで、作りたいなっていうのがあったんだなっと思います。それで自分のお店を持とうと。」
地域密着型のお菓子屋を目指して
「駅前ではなく、ちょっと歩いたところに店舗を構えたのは、”地域密着型”で行こうと思ったからです。家の近くでちょっとお土産買って来たよとお土産にしてもらえるような、家に帰る前に立ち寄ってもらえるようなお菓子屋さんになれたらいいと思っています。」

「また、夜のお菓子屋さんをずっとやりたいと考えていました。夜、仕事帰りにちょっとお菓子を買って帰れるお菓子屋さんというのは少ないもの。一人のお菓子好きとして、そういうお菓子屋さんがあったらうれしいなと思っていたので、去年やっと火曜の夜のお菓子屋を実現しました。」

忙しい人へ、立ち止まって落ち着けるお菓子屋さんに

「私もそうだったんですけど、やっぱり仕事をしている人はみんな忙しくって、なんだかせわしないなと感じています。そういう人たちのために、ちょっと落ち着くとか、立ち止まる時間がお菓子で作れたらいいなと思っています。」

「お菓子の素晴らしいところは、悲しくても怒っていても食べると、かんたんに笑顔になれること。お菓子を通じて、たくさんの人をできるだけ笑顔にできたらいいなと思っています。」

お店情報
店名:やまねフランス

住所:東京都世田谷区池尻4-39-6 北嶋ビル 1F

営業時間:火曜 19:00~、土曜 12:00~