お客様の期待を超えるショコラティエが創るパティスリー|パティスリー&カフェ デリーモ

都営地下鉄日比谷駅から直結する東京ミッドタウン日比谷。商業施設である施設の地下1階は、洗練されたベージュを基調としたアーケードが広がり、優雅な雰囲気を漂わせる。東京ミッドタウン日比谷に店舗を構える”パティスリー&カフェ デリーモ “。当時、赤坂にあった人気店は、日比谷に移転しインテリアも一新している。そのコンセプト赤坂時代から変わらず、”食事やお酒も楽しめるショコラティエ&パティスリー”。
デリーモ のシェフ 江口和明氏は、ベルギーの老舗ショコラトリー「デルレイ」本店などで修業を積んだ。

ショコラティエである江口氏がひと粒のショコラに趣向を凝らし細部まで丁寧に仕上げている。今回は、”パティスリー&カフェ デリーモ “のブランドストーリーについて特集する。

Contents

体験価値を最大化するケーキのようなチョコレート

 一般的なチョコレート専門店では、チョコレートがショーケースにずらっと並ぶことが多く、またその姿に胸が踊る人も多いであろう。

一方で、名前はフランボワーズやパッション、シトロンなど、普段聞き慣れない名前が並んでおり、形は可愛くても名前は覚えられないということは多いのではないだろうか。
 デリーモのチョコレートには、デリーモが大切にしているコンセプトを良く表現している。デリーモのチョコレートは、”ケーキのようなチョコレート”。チョコレートの味は、ショートケーキ味やモンブラン味のチョコレートが提供されている。

「自分たちは、ショコラティエがやるケーキ屋です。一般的にボンボンショコラ(1粒で食べられるチョコレート)は、食べると層になっています。その層にガナッシュなどを入れて味を変化させていきます。デリーモでは、まず第一弾として、その層を全部ケーキにしたんですよね。今度は逆に、”ショコラティエがやるケーキのようなボンボンショコラ”を作りました。」

 ”ケーキのようなチョコレート”と聞くと、「なにそれ!食べてみたい!」と思う人も多いのではないだろうか。そして、ショートケーキ味のチョコレートっと言われると覚えやすく、味も伝わりやすい。たった一つの表現やお菓子の作り方で、顧客の体験価値を最大化することができるのだ。

貧乏であった子供時代

「小学校、中学校ぐらいは、上野の下町育ち。当時は世間一般で言うところのそんなに裕福じゃありませんでした。ついこの間、実家で私の親とかと集まると本当に貧乏だったよねっていう話をしていました。」

「ただ、何を持って貧乏かっていうと、ある意味では今の世代の子たちほどは貧しくはなかったと思っていて、家族としてのチームアップはなされていました。ぞんざいに扱われたっていう思いはあんまりありません。両親が料理人で、食べ物に結構こだわりはあったんですけど、いかんせん貧乏でした。よくやっていたのは、お腹が空いて”すいとん”を食べていたわけです。」
*すいとんとは、小麦粉の生地を手で千切る、手で丸める、匙ですくうなどの方法で小さい塊に加工し、汁で煮た日本料理。[wikipedia参照]

「84年生まれなので、もう世の中には炊飯器とかいろいろある中で、すいとん食ってたんですよね。で東京大学のすぐ横に住んでいて、三四郎池とかって池があるんですけど、そこで釣りして魚釣って食べたりとか、草食ったりとか、お花の蜜吸ったりとかしてたんですよ。ただ、そんな生活の中、スキー行ったりとか、たまにお肉屋さん行ったりとか、色々なイベントはありました。その中で、母が誕生日にケーキを買ってきてくれていたんですね。」

「普段は、プリンとかババロアとか、そんなちゃんとしたものではなく、母が牛乳にゼラチン入れて固めたみたいな、そういうものを食べていました。ただ、誕生日の時だけは、モンブランとかを買ってきてくれて、それがすごいおいしくて覚えていました。そういった体験や、貧しくって満足に食べられなかったことや両親が料理人ということもあり、昔から食べ物へのこだわりが強かったです。」

誕生日のケーキがきっかけに専門学校へ

「中学校のときは、あんまり勉強はせずスポーツばかりしているような子供でした。そこで、高校はスポーツで進学しました。高校時代も、周りが大学進学を決めていく中、僕はもう迷わず専門学校に行くことを希望しました。」

「専門学校であれば何でもよかったんです。大学が嫌だったわけではないんですけど、大学は学費がかかる。うちは貧乏だったので、基本学費は払ってもらえないんです。じゃあどうしようかという話の中で、誕生日ケーキの体験から食べ物に興味があり専門学校にしようと思いました。あと、辻製菓に行ったんですけど、学校への学費の支払いとしてお金借りれるんですよね。それで借りて、アルバイトしながら専門行きました。」

「大体お菓子屋さんとかって志す人は、例えば100人いたら1人ぐらいも続かないという業界だと言われています。自分はなぜ続いたかというと、1軒目に入ったお店が、勤務時間がすごい短かったことや、お給料はそこそこだったこと、最大の理由は、お金を借りてたんで辞めれなかったことです。だから、結果的には辞めれないから続いてるということも強かったんじゃないかと思います。」

キャリアを転々とし幅広い経験を

「自分の世代は、まだまだ石の上にも三年と言われていたのですが、そういった考えが嫌でした。昔はインターネットも何もなかったんで、例えば技術を得ようと思ったら、師匠の下に5年、10年いないと駄目だったのかもしれないですけど、今は別にケーキの作り方ってネットで調べたら3秒ぐらいで出てくるじゃないですか。だから、その3年とか長い時間をかけることに意味がないと考えるタイプでした。」

「1軒目は、とりあえず就職しなきゃいけないと思い、2軒目、3軒目ぐらいはミーハーだったので世の中で流行っている企業へ。デリーモが8社目で結構転々としている感じです。その中でも様々な経験をしました。26歳ぐらいのときに、全然何もできないのに、海外から来たブランドの商品開発を含めたシェフをやっていました。職場の皆さん年上で、責任感があるから、何とかしなきゃいけない感じで、がんがん働くわけです。でも、会社が数字を公開してなく定かではないのですが、多分全然儲かってなかった。お菓子屋さんという事業は、こんだけ長いこと働いて、給料もこんなに安くて、「何だ、この奴隷制度は?」みたいな疑問がふつふつと沸き起こってきました。それで、そんな業態は嫌だなと思い、26から30歳までの4年間、レストランの会社に入り、経営企画みたいなことをやりつつ、チョコレートショップの担当になりました。ここで、圧倒的に利益を出す経験をしました。会社ってこうやって利益を出すんだみたいなことはそこで勉強しました。」

「デリーモっていうこの事業を始めたきっかけは、年商100億ぐらいの事業をやりたいと思ったことがきっかけ。国内の市場より、海外がいいと思っていました。この会社と会ったとき、中国とかハワイとか海外やっていました。それで入ったら、これもご縁があって、赤坂でデリーモ をやろうという話に。海外じゃないのかと思ったんですけど、赤坂でやることになりました。」

お客様の期待を超える体験価値への追求

“お客様の期待を越えるおもてなしをすること”。それが江口氏のお菓子作りへの姿勢だという。それは、パティシエ時代だけではなく、貧しく若い頃より学費のため様々なバイトを経験した結果から導き出したものなのだという。

「パティシエのことを『お客様喜ばせ業』だと思ってて、お客様を喜ばせるためにたまたま得意なお菓子作りをしているっていう感覚なんです。」

「ただ、自分自身、例えば世界大会第1位で優勝したとか、コンクールで優勝したとかいうタイトルの様なキャリアは持っていません。それは弱みでもありますが、多分時代の流れで、今はそういった肩書きは、だんだん意味を持たなくなってきました。そういう時代になったときに、自分がポイントにしてるのは、お客様に分かりやすく付加価値のあるものを提供し、お客様の体験価値を最高にすること。」

味や見た目にこだわることは、どんなお菓子屋さんでも当然やっていること。そこで、どういったことでお客様の体験価値を高めていくかというと、シンプルに良さを伝えることを心掛けているのだという。

「お菓子屋さんは全部こだわってるんですよ。でも、そのこだわりはお客様には伝わりきらないのです。伝わりきらないからこそ伝わるような表現をすべきだと考えています。
 例えば、デリーモでは、「ショコラティエが創るパティスリー」と表現しています。要は、チョコレート職人の作るケーキ屋ということ。そういった表現をすることで、チョコを使ったケーキについては、こだわってそうですし美味しそうに感じられるのです。」

「チョコレートをまずカカオって呼んで、原産地がどこどこで何%と含まれていて、これぐらいこだわっていると言うと、ちょっと分かりにくい。それであれば、カカオを持った写真を出すとかした方がお客様にチョコレートにこだわっている事が伝わりやすい。
 うちのボンボンショコラもそうで、”ケーキのようなチョコレート”と言われるだけで、お客様にとって伝わりやすいし食べてみたいと思ってもらえると思うのです。」

再現性のある徹底したお菓子作りへのこだわり

個性的な考えを持つ江口氏。昔のように1つの会社で技術を磨くのではなく、他のパティシエやショコラティエの方とは違い転職を繰り返し幅広い知見や経験を得て来た。しかし、1つの会社に下積みを行うことでお菓子作りの基礎を作ることは自身でも欠けていると考えるところはあると言う。そこで、データを使い再現性のある徹底したお菓子作りにこだわっているのだという。

「お菓子は、『化学的に何グラム+何グラムでこんな味ができます』という事を何回も試行錯誤を続け、お菓子作りを数字でまとめてるのです。なので、例えば糖度とか甘さを機械で測り、例えば『10と10』っていう甘さの数字が出たお菓子があるとします。そうすると誰かに食べてもらって、『これは全然甘くないよね』って言われても、機械が甘さ『10と10』って出してるため、甘くないわけはないんです。ただ一応、本人の甘さの感度などや、何かと何かをブレンドしたらこうなってしまうってことは大なり小なりあります。その感度の変化を最小にしつつも、それ以外は、卵に火入れたら絶対固まる、と言う絶対にそうなる科学的な部分が多い。」

「チョコレートのレシピも、こういうパフェのレシピも、『江口さん、アイスクリームを50グラムずつ取ったら。5個しか取れなかったんです』って、そしたら250グラムじゃないですか。いやいや、ケースの中に400グラム入ってんだから、余るはず。余らないと言うことは、ロスになってるか、食べちゃったかみたいな、ということの事実を理詰めするだけです。」

「デリーモでは、例えば生クリームなどを機械で泡立てています。そうすることで、ダイヤル何番で生クリームを入れると、自動でその固さのクリームが立ちます。それは、お菓子作りの基礎へのカバーと言う考えもあるのですが、そもそも8分クリームを立てて、状態見ながら3分ぐらい混ぜてくださいとか、勘を積み重ねたようなお菓子作りは意味がないと考えています。そういった一つ一つの技術で、職人として腕を上げている、ということを言う人も当然います。でもそうではなく、デリーモでは、お客様に届くものが自分の想像する味であればいいと考えています。決められたルールの下、時間内で終わると、時給単価で考えられるので費用も分かりやすい。それなのに、みんなが5分で終わる仕事をその人が30分かかってたら、要は給料6倍取れるわけですよね。そんなことを許してたらおかしいから、平均値取って、早い子は給料上げてあげたらいいんです。遅い子は上がりません。勤続年数5年働いた人が腕がいいかっていうとそうでもありません。入ったばっかりでも、腕が良い人の方が給料高いのは当然。パティシエのキャリアには興味なく、やってみてもらって、自分にないものを持ってたら、自分より給料高くても良いと思っていて、自分はお菓子作りの再現性を高めることが得意なのでそこをやっています。デリーモでは、得意な人が得意なことをやって、お客様の満足度をチームとして上げてるだけです。」

関西にも広げるデリーモの世界観

「今後は、神戸、京都など、デリーモで初めて関西に進出することになりました。そこでは、東京とはまた違ったコンセプトで、神戸は、ショコラティエの創るティーサロンみたいな形で、京都は、和風を強調したものを考えています。
 ただ、京都は、和もあるんですけど、京都駅なので、ちょっとイノベーティブな、始まりと終わりの京都みたいなことをテーマにしています。皆さんが京都に来て、いろいろ観光されて、もう1回京都駅に戻ってくる。だから、そこでまた抹茶とかやっても、売れるんですけど、色々回った後なので、普通に出しても面白くない。そこで、抹茶とショコラとフルーツみたいな、何かを混ぜた新しいもので、観光をした後の人でも感動するものを提供したいと思っています。」

デリーモ 店舗情報

お店情報
店名:パティスリー&カフェデリーモ 東京ミッドタウン日比谷店

住所:東京都千代田区有楽町1丁目1-3 東京ミッドタウン日比谷 B1F

定休日:施設に準ずる

営業時間: 11:00~23:00(LO.22:00)

お店情報
店名:パティスリー&ショコラバー デリーモ 目白店

住所:東京都豊島区目白2-39-1 トラッド目白 1F

定休日:施設に準ずる

営業時間: 11:00~20:00(LO.19:00)

お店情報
店名:パティスリー&カフェ デリーモ 渋谷ヒカリエ ShinQs店

住所:東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ ShinQs B2F

定休日:施設に準ずる

営業時間: 10:00~21:00(LO.20:30)

お店情報
店名:パティスリー デリーモ ルミネ立川店

住所:東京都立川市曙町2-1-1 ルミネ立川 1F

定休日:施設に準ずる

営業時間: 平日 10:00〜21:00 / 土日祝 10:00〜20:30

お店情報
店名:DEL’IMMO クレンジングカフェ&ワインショップ

住所:東京都港区北青山2-3-1 Itochu Garden 1F

定休日:日曜日・祝日

営業時間: 11:00~20:00

お店情報
店名:FruiTea Salon DEL’IMMO大丸神戸店

住所:神戸市中央区明石町40番地

定休日:施設に準ずる

営業時間: 10:00~20:00(LO.19:00)

本山智男
株式会社SweetsVillage 創業者。 3度の飯よりスイーツが好き。お菓子屋さんの取材を50件以上実施。様々なスイーツの企画にも携わり、スイーツの商品開発などにも携わる。