東京駅八重洲北口、東京ギフトパレット内にある「SOLES GAUFRETTE(ソールズ ゴーフレット)」は、フランスの伝統菓子ゴーフレットの専門店だ。ゴーフレットは日本ではまだあまり聞き慣れないかもしれないが、本場フランスでは、小さな子どもから年輩の方まで幅広い世代に愛されているお菓子である。
「ゴーフレットの魅力を、ぜひこの日本で広めたい」ある1人の開発者の熱意から生まれたソールズ ゴーフレットは、もっちりとした独特の食感と、芳潤なバターの香りが口いっぱいに広がり、至福の時間をわたしたちに届けてくれる。このなんともクセになってしまう食感や味わいはどのようにして生まれるのだろう。その秘密を探る。
ゴーフレットに魅了されて生まれたブランド
ソールズ ゴーフレットは、ベイクチーズタルトやプレスバターサンドなどを展開するBAKE Inc.が2020年8月に新しく始めたブランドである。
ベイクチーズタルトをはじめ「作り立てをお客さまへ提供する」ことにこだわり、店頭で焼き、その焼き立てを販売するといったコンセプト。開発担当である吉田氏が「日本でまだ認知されていない世界の美味しいお菓子を、弊社の新ブランドとしていずれ展開できないか」と思案。その年月は7年にも及び、ずっと大切に温められてきた吉田氏の想いは、2020年8月にソールズ ゴーフレットとして花開くこととなる。
なぜゴーフレットを選んだのか。その理由は、「日本の市場ではまだあまり目にする機会が少ないうえ、シンプルながらも存在感のしっかりとある美味しさに魅了されたから」と、ソールズ ゴーフレットのマーケティング担当 田代氏。これまで、すでにいくつものスイーツブランドを展開してきたBAKE Inc.ではあるものの、日本で知名度のあまりないお菓子のジャンルにトライするのは初。
「ソールズ ゴーフレットはBAKE Inc.としてもチャレンジです」
本場の味を日本の方に親しんでもらうための工夫
「社内でも、ゴーフレットと聞いてすぐにお菓子のイメージが湧くスタッフはブランドを立ち上げるまで少ない印象でした。ブランドとして落とし込む以前に、ゴーフレットそのものをどう広めていくかに焦点を当てました」
ゴーフレットはまだあまり日本では知られていないが、フランスでは年代を問わず親しまれ続けている伝統菓子である。日本のお菓子で例えるならば、煎餅や大福などに値する。素朴だが味わい深い、だからこそ多くの人に愛され続けている。
ゴーフレットをこの日本でいかに多くの方に知ってもらうかをまずはスタッフたちと話し合い、その次に商品開発について思案。
「本場フランスのもっちりとした生地が日本の方に好まれるだろうと、生地にもこだわりました」
小麦粉はBAKE Inc.のPB(プライベートブランド)のものを使用。薄力粉に比べてグルテン量が多い中力粉に近い粉を使うことで、本場さながらのもっちりとした食感を実現。
中のクリームはニュージーランド産のバターを使用し作られたなめらかなバタークリームと、バニラミルクジャムの2種類。天然のバニラを採用しているため香り高い。さらに粉糖、素焚糖、ザラメ糖それぞれ粒度の違う3種類の砂糖を生地やクリームなどに使い分けることで、香りや食感がより生きるよう工夫されている。
クリームにはザラメ糖をミックス。なめらかな食感とシャリっとしたザラメ糖、もっちりとした生地の三位一体を楽しめ、長年受け継がれてきた伝統のレシピと、ソールズ ゴーフレットならではのオリジナリティを融合させ、ゴーフレットを初めて食べる日本人にも美味しいと感じてもらえるよう工夫した。
機材は全てオリジナル
ゴーフレットは一度に焼ける数が多くはないため量産には向いていない。ソールズ ゴーフレットで使用している焼成機は、オリジナルで開発された専用の機械ではあるものの、一度に焼くことができる数は4つまで。焼いて膨らませ、切って中にクリームを挟み、袋に詰める。他のお菓子と比べて時間も手間もかかるこの一連の工程は、日々、スタッフの手作業によって行われている。
ゴーフレットの特徴でもある表面の格子模様。ソールズ ゴーフレットではこの模様をつけるオリジナルの焼き型を、7回もの試作を繰り返して完成させた。試作当初は生地を焼いても膨らまず、どうすればうまく焼けるようになるのかと本場のゴーフレットの焼き型を改めて研究したという。
「伝統の形である格子型がゴーフレットの食感に大きく左右することがわかりました。ずっと守り続けられてきたものは、すごくきちんと考えられて設計されているんだと改めて教えられました」そう話すのは、パッケージ等のデザインを担当するデザイナー 加藤氏。
型が出来上がるまで行われた格子模様の検証は、じつに何十パターンにも及ぶ。試行錯誤を繰り返したその軌跡は、店頭カウンターに組み込まれた型のサンプルのデザインでたどることができる。
「出来立てをお客様へ提供する」ことへのこだわり
東京駅にある店舗では、焼き立てを購入することができる。焼き立てのゴーフレットは通常のものよりひと回り大きなサイズで提供され、中のクリームにはメレンゲを入れてよりあっさりと軽やかな風味と食感に仕上げている。
目の前で焼いているところを見られるのは、創業当時から「出来立てをお客さまへ提供する」ことにこだわり続けてきたBAKEならでは。
「焼いているときのゴーフレットが膨らむあの瞬間に、人の心を動かす力が宿っていると思うんです。店頭にいらっしゃって、携帯で動画を撮っているお客様を目にするとほっとします」
そう話すのは、加藤氏とともにデザインを担当する、デザイナーの加瀬氏。
その柔らかな笑顔と、「嬉しい」ではなく「ほっとする」という言葉からは、これまでの歩みが経験していないものには想像しがたい苦労がいくつもあったことが伺える。決して楽ではなかったこれまでの道のりのその先に、お客さまの笑顔があったこと。その喜びを加瀬氏の表情から感じられた。
ゴーフレットと価値ある時間を届けたい
「わたしたちとしては、大切な方へのギフトとして選んでいただきたい想いがあります。贈るときも食べるときも、ゴーフレットにまつわる全ての時間が幸せであって欲しい。ですので、味や食感、風味、原材料だけでなくパッケージにもこだわりました」と、田代氏。
そのためには、商品開発とデザインを担当するそれぞれのスタッフのコミュニケーションがとても重要だ。
「ソールズ ゴーフレットは、開発者が約7年もの間ずっと温めてきた末に生まれたブランドだけあって、想いの熱量もそれだけ大きく、わたし個人としても正直プレッシャーを感じていました」そう話すのは、パッケージデザインを担当した加藤氏。
「この商品を日本の皆さんにお届けするにはどうすれば良いんだろう」
ゴーフレットの特徴的な形や焼き型からインスピレーションを受けながらデザインへと落とし込んでいった。
パッケージにはピンクベージュとネイビーの2色を使って、それぞれの色に違う想いを込めた。本場のゴーフレットは時間と手間のかかるお菓子で、一つひとつ職人の手によって作られる。そこで、“作り手の手の温度”を柔らかなピンクベージュで表現した。
また、伝統菓子であるクラシックな意味合いをあらわすために、シックなネイビーを採用。凹凸感のある表面には独特な風合いがあり、洗練されつつ温かな印象のパッケージに仕上げた。小包装のメタリックのパッケージは、ゴーフルを焼くときに使用する焼成機の中に含まれる真鍮からヒントを得たという。
※撮影は新型コロナウイルス感染症対策下で行いました。
BAKE Inc.では、ブランドを立ち上げる一番最初の段階からデザイナーも一緒になって、開発者とともに一つのブランドを作り上げていくのが基本なのだと、加藤氏とともにデザインを担当した加瀬氏は教えてくれた。
だからこそ、作り手の想いに寄り添って形にすることができるのだろう。
ブランド名である「ソールズ ゴーフレット」は、ゴーフレットの形がまるで靴の底に似ているところから「靴底=ソールズ」に由来する。ソールには靴底だけでなく、“足跡”や“軌跡を残す”といった意味や、ゴーフレットがより多くの方に届きますようにといった想いが込められている。
本場の伝統製法を受け継ぎつつブランド独自のオリジナリティを織り交ぜ、より日本人の好みにフィットするよう見た目や食感、風味まで幾度もの試行錯誤を繰り返して生まれたソールズ ゴーフレット。お家で過ごすことの多い今、ほっとひと息つける瞬間が、以前にも増してとても大切であるように思う。きゅっとちぢこまった気持ちをときほぐすための甘い時間を、ソールズ ゴーフレットとともに過ごしてみてはいかがだろうか。
[box title=”店舗情報” box_color=”#c30d23″]店名:SOLES GAUFRETTE 東京店
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1 東京駅八重洲北口「東京ギフトパレット」内
営業時間:9:30~20:30(平日) | 9:00~20:30(土日祝)
[/box]
[gmap address=”東京都千代田区丸の内1-9-1 SOLES GAUFRETTE”]