農園で働く人たちの想いも一緒に届けたい。|チョコレートセレクトショップ カカオストア

「カカオストアは、板チョコのセレクトショップのような場所」そう語るのは、お店のオーナーシェフ、土屋公二氏。本店であるテオブロマ渋谷店から歩いてすぐの場所に、カカオストアはある。店内には土屋氏の言葉通り、数えきれないほどの数の板チョコレートが並び、カカオストアオリジナルはもちろん、海外から買い付けた、板チョコレートも手に入る。

今回はそんなBean to Barの中から3つの商品をピックアップ。さらには、土屋氏が提案するチョコレートの楽しみ方や、カカオストア併設カフェの人気メニュー「トーストショコラ」についても合わせて紹介する。

マダガスカルの新生:MENAKAO(メナカオ)

「『メナカオ』は、マダガスカルのブランドです。マダガスカルのカカオ豆の特徴は、ちょっとベリー系に近い、酸味を感じられるところですね。」

マダガスカルには、2つのチョコレートブランドがあります。1つは、ショコラマダガスカル(写真右、中)
。もう1つが、メナカオというブランド(写真左)で、どちらも本格的な高級チョコレートです。ショコラマダガスカルは昔からあるブランドで、シンプルに、チョコレートだけで楽しみたい方におすすめです。口当たりがとてもなめらかで、人気もあります。メナカオはまだ新生。珍しい具材の組み合わせにトライしているブランドで、ちょっとユニークなチョコレートが揃います。」

カカオストアには、現在7種類のメナカオがある。カカオのパーセンテージ違いや、ヘーゼルナッツ風味のもの、ソルトを使った塩味を感じられるものなどが揃っている。中でも一番気になるのが、「コンババ&ピンクペッパー」だ。マダガスカル産のカカオを63%使用したダークチョコに、ライムの一種であるこぶみかんと、ピンクペッパーが加わる。こぶみかんは、東南アジアが主な原産地の柑橘類の一種である。美容にも良い食材とも言われている。山椒のような、すっきりとした風味が特徴だ。そこへ、ピンクペッパーのピリッとした辛さが加わり、さわやかで、程よくスパイシーなチョコレートに仕上がっている。手に取りやすい価格も嬉しい。現地の人を描いたパッケージも印象的だ。

珍しいホワイトカカオのペルー:CACAOSUYO(カカオスーヨ)

カラフルなパッケージが目を引く「カカオスーヨ」。こちらはペルー北西部にあるピウラ地方が主な産地。

「7年前、初めてペルーに行った時のこと。当時、まだカカオスーヨはできたばかりでしたが、食べて、あまりに美味しくて、『これはぜひ取り扱いたい』と即決。その頃、私自身、ペルーで良いカカオ豆が採れるだなんて知りませんでした。ホワイトカカオというちょっと珍しい種類のカカオなのですが、葡萄のような、豊かな甘みを感じられるのが特徴です。豆自体の香りがとても芳潤、それでいて苦味や酸味は控えめで、気品を感じます。」

ホワイトカカオ自体、とても希少価値が高いのだそうだ。土屋氏はあまりの美味しさに感動し、その後に開催されたパリのサロ・デュ・ショコラへ持参した。するとそこでも高評価を得た。後に日本でも評判となる。ショコラ界では「ホワイトカカオを初めて日本に浸透させたのは、土屋さんだ」と言われている。
また、カカオスーヨの社長であるSamirは、「我々の作るチョコレートを美味しいと褒めてくれたのは、土屋さんが初めてだ。とても感謝している」と喜び、日本でカカオスーヨを取り扱っているのは、テオブロマだけ(カカオストアでも販売)。2人が強い信頼と絆で結ばれている証だ。

ベトナム産チョコレートの最高峰:MAROU(マルゥ)

ヴィンテージ感漂うパッケージの「マルゥ」。なんとこちらのパッケージ、一つ一つ現地で手印刷(プリントスクリーン)されているらしい。種類によって変わるカラーリングにも、きちんと意味がある。ひとくちにベトナム産カカオと言っても、収穫できる地域はトータルして5つほどある。その産地ごとの違いを、色で表現しているのだそう。
マルゥは、ベトナムで出会った、ヴィンセント氏とサミュエル氏の2人のフランス人により立ち上げられた、ベトナム初のBean to Barブランド。使用するのは、ベトナム産のカカオ。ベトナム産チョコレートの最高峰としても、マルゥは知られる。

「ベトナムのカカオ豆はレーズンなどのドライフルーツの香りに近い。香りは強め、それでいて甘さ控えめで”カカオ感”がしっかりあるビターな味わいだから、お酒ともよく合います。」

他のチョコレートと比べても、ベースのカカオがダイレクトに伝わってくるのが、マルゥの特徴。お酒とのペアリングに向き、特におすすめは赤ワインなのだと教えてくれた。甘いものが苦手な方にもおすすめできる。

カフェの人気メニュー:トーストショコラ

程よい食感のバケットに、板チョコを1枚乗せた、大胆かつユニークな「トーストショコラ」。カカオストア内カフェで提供されている、人気メニューだ。

「ぱっと見で、『チョコの方が大きい!』と、インパクトがあって面白いですし、ひとつの演出としても楽しんで頂けるのではないかな、と思います。シンプルですが、上のチョコレートが溶けてしまわないように、ちょうど良いタイミングをはかるのが、実はとても難しいのです。形が崩れないように、けれど食べる頃には溶けるようにと、計算しています。」

トーストの香ばしさに、チョコが濃厚にからまる一品。なお、トーストに使用するチョコレートは、時期によって異なる。定期的に通っては何度も口にしたくなる、至極のトーストショコラだ。

40年の経験が生む、極上のチョコレート

カカオストアに並ぶお店オリジナルのチョコレートたちは、土屋氏自らが、世界各国、いくつものカカオ農園へと足を運び収穫したカカオをもとに、自社で加工からチョコレート製造までの全ての工程を行う、Bean to Barだ。

Bean to Barは、カカオ豆をローストする時の温度や、細部に至るまでの調整など、あらゆる面で時間と手間がかる。しかしその分、繊細な調整が可能となるため、新しい味と出会う偶然も、極めて多くなる。味わいや香り、苦味や甘みなど、よりチョコレートに愛情を込めることができるわけだ。

Bean to Barの中には、様々な食感のお店があるが、土屋氏は「口溶けの良い、なめらかさにこだわる」と話す。しかしその反面で、「『必ずしもこうでなくてはならない』は違う」とも。

「チョコレートを作ること自体を楽しみたいのです。だから、『うちのやり方はこうだ』とか、絶対に固執しない。臨機応変、常に美味しいチョコレートを求めて、材料や製造工程を探究する日々です。チャレンジしたからこそ見える景色を大切にしたい。」

「ちょっと特殊な能力があるんです(笑)。というのは冗談ですが…絶妙なカカオ豆のローストの温度など含め、目に見えるものだけで判断するのではなく、その”裏”にあるものを読むように、じっくりカカオと向き合い、見極めながら製造しています。長年カカオと付き合っているからこそ実感するのは、絶対に数値化できない世界だな、ということ。」

40年以上も、カカオと真っ直ぐに向き合ってきた土屋氏だからこそ、経験の上に成り立つ、研ぎ澄まされた感覚なのだろう。

チョコレートにも物語がある

カカオストアのオリジナルチョコレートのおすすめの食べ方について、土屋氏に聞いてみた。

「基本は自由に食べて欲しい。もしも提案するならば、いくつかの種類の板チョコを買っておいて、例えば休みの日に、ちょっと疲れたなと思ったら一つ口に入れる。コーヒーを飲んで、また一口。なんでもない会話を家族や恋人としながら、また口にチョコレートを入れる。そんな感じで、カジュアルに楽しんで欲しいですね。」

「こんな楽しみ方もひとつ、おすすめしたいな。可愛いパッケージのチョコレートがカカオストアにはいくつもあるでしょ。例えば、恋人が家に遊びに来る。そんな時、おしゃれなパッケージのチョコレートが部屋に置いてあったら、ちょっと素敵じゃないですか。センスの良い魅力的なパッケージを、インテリアとして飾るなんて発想も、良いですね。」

夜のお酒のおつまみに、チョコ、なんていうのも、これまたおしゃれじゃないですか?ただし、後でちゃんと歯を磨いて下さいね(笑)」

土屋氏自身、チョコレート作りを楽しんでいるからこそ、食べる人にも「楽しむことを大切にして欲しい」という思いが伝わってくる。冗談を交えながら話す中、土屋氏はこんな思いも口にした。

「私は一年の間に、6つほどの国のカカオ農家へ足を運んでいます。そこでは、カカオの木の状態を見たり、農園の人たちと会話したりしながら、どんな思いや気持ちがその場所に流れているのか、そこを汲み取っています。私が届けたいのは、良質なカカオだけではありません。農園で働く人たちの想いも一緒に届けたい。」

土屋氏の作るチョコレート、その根底には、関わる全ての人たちの思いがぎゅっと詰まっている。だからこそ生まれる、豊潤で豊かな味わいを、ぜひ一度、体感して頂きたい。

[box title=”店舗情報” box_color=”#c30d23″]店名:CACAO STORE(カカオストア)

住所:東京都渋谷区富ケ谷1丁目6−8

営業時間:
月曜~木曜・日曜・祝日 11:00~20:00(L.O.19:00)
金曜・土曜・祝前日   11:00~21:00(L.O.20:00)

web site:https://www.theobroma.co.jp/shopbrand/cacaostore/
[/box]

[gmap address=”東京都渋谷区富ケ谷1丁目6−8 CACAO STORE”]

チョコレートを通じて人生をより豊かに|チョコレートセレクトショップ カカオストア

代々木公園のほど近く。おしゃれな輸入雑貨屋かと思いきや、店内にはカラフルな板チョコが勢揃いしている。
ここは、チョコレートの専門店「テオブロマ」を手掛ける日本人ショコラティエのパイオニア土屋公二氏が、2015年にオープンしたBean to Bar専門店「CACAO STORE(カカオストア)」である。カカオストアオリジナルのBean to Barはもちろん、海外ブランドのBean to Barもセレクトされている。

店内には、カフェスペースも完備。こちらでは、食事やデザート、ドリンクのほかに、アルコールもあり。お酒とチョコのペアリングが楽しめる、”大人の隠れ家”にもぴったりの場所だ。

Sweets Villageは、一年ほど前にも土屋氏にインタビューさせて頂いている。その時は、土屋氏とチョコレートとの出会いについてや、チョコレートへの深い愛を語って頂いた。今回は、ここ「CACAO STORE(カカオストア)」について様々な角度からインタビュー。どのような経緯で誕生したのかや、お店のこだわり、そしてこれからの展望などについても伺ってみた。

“板チョコのセレクトショップ”を作りたかった

カカオストア誕生は、2015年9月15日。テオブロマとして、すでに都内に3店舗を構えているが、他の店舗とカカオストアにはどのような違いがあるのだろう。また、お店が誕生することとなった経緯についても聞いてみた。

「1999年3月、チョコレートを中心に扱うお店「ミュゼ・ドゥ・ショコラ テオブロマ(本店)」をオープンしました。今でこそチョコレートの専門店はたくさんありますが、当時はまだ少なくて、チョコレートだけでやっていくのは、とても難しい時代でした。そこで考えたのが、カフェを併設し、チョコレートを使ったスイーツやドリンクを提供できるようなお店はどうか?と。」

「現在、チョコレートは一般化して様々な形で世の中に普及しました。時代の流れの中で、板チョコをメインテーマとしたセレクトショップ『カカオストア』を設立することになりました。カカオストアは、長年思い描いた構想が形になったものと言えます。店内にカフェを設け、自社製品のほかに他社のチョコレートも豊富にラインナップする。今までより、もっと広い視野と感覚でチョコレートを楽しめる、そんなお店になっていると思います。」

ドリンクメニューには、コーヒーや紅茶のほかに、カカオやチョコレートをベースとしたドリンクもあり、チョコレート専門店ならではのこだわりと個性を感じる。

カカオストアの店内に入るとまず目に飛び込むのは、豊富な板チョコのラインナップ。「こんな数の板チョコ、見たことない!」そう驚くと同時に、眺めているだけで、なんだか幸せな気持ちになってくるから不思議だ。

「カカオストアは『板チョコのセレクトショップ』のようにしたいとも考えていました。『カカオストアへ来たら、100種類以上もの板チョコがあるよ!』というように、まるで宝探しをするかのように、わくわくする空間にしたかったのです。」

目移りするほどの数の板チョコのラインナップに圧倒されつつ、可愛いパッケージにも心踊る。独特な線のタッチと配色は海外の絵本のようだ。

「板チョコってね、とても奥深いんです」

カカオストアが主に掲げるコンセプトは、3つある。

①「Bean to Bar」
②「豊富な数の板チョコのセレクト」
③「チョコとお酒を楽しめる大人な空間」

これらコンセプトの深い部分について、さらに土屋氏に聞いてみた。

「テオブロマを作った時から、『チョコレートをもっと身近な存在にしたい』と考えていました。今もなお、その気持ちは健在です。そこで思いついたのが、板チョコ。手軽に買えて、持ち運びもしやすくて、パクッと口に入れることのできる板チョコなら、たくさんの方の毎日・日常に溶け込みやすいのではないか、と考えたのです。そして誕生したのが、『板チョコのセレクトショップ』カカオストアです。」

「板チョコってね、とても奥深いんです。国が違えば味も変わるし、カカオのパーセンテージによっても苦味が違います。中には少し”ひねり”を効かせた板チョコもなどもあって面白い。ちょっと珍しい食材を使ったものや、砂糖を一切加えずに作られたものもあります。今まで食べたことのないチョコレートに、ぜひ出会って欲しい。カカオストアが、そのきっかけになると嬉しいですね。」

「自分が経験した中で感じた感動や発見を、たくさんの人と共有したいのです。というのも、この業界にいると、本当に色んな方たちとの出会いがあります。私は元々、大手メーカーさんが作るチョコレートしか知りませんでした。けれど、こうしてチョコレートの専門店をしていると、否が応でも、チョコレートの魅力に触れることとなります。チョコレートの個性に触れること、それは、心の想像力を豊かに育ててくれるのです。」

自分好みのチョコレートと出会う方法

ひとくちにチョコレートと言っても、驚くほどの種類があることを知った。それらを目の前にすると、「一体、どれを選べば良いのだろう?」と、迷ってしまうことだろう。そんなチョコレートビギナーさんにもおすすめな、『自分好みのチョコレートと出会うハウツー』を、土屋氏にレクチャーして頂いた。

◉チョコレートビギナーがチョコレートオタクになるまでのポイント

1.小さいサイズのチョコレートの食べ比べで違いを楽しむ
2.ミルク、ブラックの違いを楽しむ
3.カカオのパーセンテージで違いを楽しむ
4.国の違いを楽しむ

「まずは、いくつものチョコレートを食べ比べしてみることが第一です。いきなり大きな一枚のチョコレートでを食べるのではなく、小さく個包装のものをバリエーション豊かに手に取り、試してみること。そうすることで、自分の好みがなんとなくわかるはずです。次に、ミルクチョコとブラックチョコの違いをよく味わってみる。甘いものが好きな人はミルクを選びがちですが、あえてブラックをチョイスするなど、普段は選ばない方を手に取る、というのも、面白い発見に繋がります。」

「次に、カカオのパーセンテージの違いによる変化、これを実感してみることです。パーセントによって大きく変わるのは、苦味。好みには本当に個人差が現れますが、大体の方は65~70%くらいのものが好きとおっしゃいますね。一方で、意外と100%が好きな人も結構いるんですよ。100%のチョコレート自体が巷にはまだ少なく、店頭で見つけると『お、食べてみたい』と、思わず興味が沸くのだと思います。とは言っても理由はそれだけではなく、甘いものが苦手な方や、『お酒によく合うから』と、好んで選ぶ方も多くいらっしゃいます。」

「パーセンテージの違いがわかったら、次は国の違いを楽しむ。今までガーナしか知らなかった方が、例えばベトナムやペルーのチョコレートを食べて違いを楽しむ、とかね。『私はカカオ70%が好みだから、70%のもので3つの国のものを食べ比べしてみよう』なんていう風に、理屈っぽくならず、難しくも考えず、自分なりに楽しんで欲しいですね。」

パッと目を引くパッケージデザインはどこから生まれるのか

「CDの”ジャケ買い”ではないけれど、『パッケージが可愛いからこれにしよう』なんていう選び方、これも良いですね。」

とにかく自由に、チョコレートを自分らしく楽しんで欲しい。そんな土屋氏の想いをそのまま形にしたような、目を楽しませられる、それこそ”パケ買い”したくなるような可愛いパッケージのチョコレートが、カカオストアにはいくつも並んでいる。

「これね、まだ昨日届いたばかりなんですけど、ドミニカ共和国のカカオ豆で作った新作チョコです」と、サイイグアナのイラストが描かれた新作チョコを、一足お先に見せてくれた。

写真は新作チョコのパッケージに使う原画。画家の樋上公実子さんが描いたサイイグアナは、かなり繊細に細かく描写されている。

「このドミニカ共和国の新作チョコは、製品化するまでに半年かかりました。まず、ドミニカ共和国のカカオ豆を使おう、というところから始まります。現地へ出向き、次にパッケージデザインをどうするか考える。その国特有の動物をパッケージに描くのは、動物って愛らしいじゃないですか、可愛いしね。それに、その国の人も喜んでくれます。」

「ただね、困ったことに……ひとつの国に、そこにしかいない動物が3種類もいたりするんですよ。どれを選ぶのかはもう、こちらのチョイスに委ねて頂くことになるわけですが(笑)……。例えばドミニカ共和国なら、フラミンゴ、ワニ、イグアナと3種類いて、その中から選ぶわけです。フラミンゴってイラストにした時、とっても可愛いじゃないですか。パッケージにするにも向いているかな、と直感的に感じはするのですが、ちょっと変わったイラストの方が面白いかな?なんて思って、今回はイグアナを採用しました。王道よりも、ちょっと個性的な方が魅力を感じることあるでしょ。」

デザインを考える時、常に頭に想い浮かぶのはお客様の顔だと土屋氏は話す。どんなものを作ったらお客様がニッコリ笑って、手に取った時にワクワクと楽しくなるのかを想像しながら、いつもパッケージデザインを考えているのだという。可愛いパッケージが生まれる秘密は、土屋氏が常にお客様目線でいること、そして、ドストライクなものからほんのちょっぴり外れたユニークな視点を持ち合わせているからこそである。

「良いものだけを、丁寧に作り続けたい」

「本店を始めてから20年が経ち、世の中の動き的に、人々のチョコレートへの関心度が年々高まっていると感じます。特に2010年以降伸びているのが、Bean to Barのお店です。」

Bean to Bar(ビーントゥーバー)とは、カカオ豆の仕入れから焙煎・粉砕、板チョコを作るまで、全ての工程を自社で行うスタイルのこと。土屋氏は、Bean to Barが流行るずっと前から、カカオの原産地まで足を運び、収穫はもちろん、現地で働く人たちの教育や指導も行なってきた。今までは、Bean to Barを敢えてコンセプトとしてこなかったが、カカオストアを開店するにあたり、Bean to Bar中心の商品展開にすると決めたという。

私自身、新しいお店を作るにあたり、『Bean to Barの分野に参加したい。長年、チョコレートの専門家として生きてきた中で培ったカカオ豆の知識を生かし、よりお客様にチョコレートの魅力を伝えたい』そんな想いを抱くようにもなりました。このお店はまさに、そんな気持ちを反映しています。」

「ここ数年のうちに、どうして世界中でBean to Barのお店が増えたのか。考えられる理由はいくつかあります。まずひとつ挙げるとするならば、チョコレートを作るために必要だった何十億円とする大きな機械、今まではこれが無ければカカオ豆からチョコレートを作ることは不可能でした。しかし、時代の流れの中、ある研究者が、インドのスパイスを磨り潰すために使っている石臼のような機械を、カカオ豆を磨り潰すために使えないだろうか?と発案したのです。価格も、今までのものに比べてかなり安価で手に入るとあり、大企業でなくとも購入できる。これが、Bean to Barが急に増えた要因だろうと考えます。」

「機械が手に入っても、肝心のカカオ豆が手に入らなければチョコレートは作れません。インターネットが主流の昨今、有力な情報を簡単に知ることができるようになりました。カカオ豆もインターネットで手軽に購入できます。チョコレートを一から作ることは、時代の流れとともに、それほど難しいものではなくなった、ということです。」

とは言え、品質の良いチョコレートだけが世の中に出回っている、とは限らない。ものを一から作るという行為は、長年の経験、現地で見聞きしたものを肌で実感することからでなければ得られないもの。そして何より、作り手の想いが強く反映するとも思うのだ。

「私の根底には『良いものを丁寧に作りたい』という想いがあります。チョコレートを40年もやってきた中で、やはり豆から作ってみたいという想いを、ずっと温めて、ずっと大切に育ててきました。」

「時代が早く進んだとしても、私は焦りはしません。チョコレートは、私の投影です。生き様を表す存在、人生そのものとも言えます。チョコレートを商売として捉える以前に、『きちんと魂が通っているものでなくては、世に出す意味がない』と考えているのです。Bean to Barをコンセプトにするならば、現地に出向き、カカオ豆を実際に見て、働く人と言葉を交わし、そこから良いと感じるものを製品化したいのです。」

土屋氏の、ショコラティエとしてのプライドを感じた。

ワークショップを通じてチョコレートの魅力を伝える活動

カカオストアでは、「チョコレートの魅力をもっと知って欲しい」との想いから、土屋氏自らワークショップを開催している。カカオ豆からチョコレートが完成するまでの工程を見たり、実際に各国のチョコレートの食べ比べができる参加型ワークショップだ。ここでのワークショップでは、「本当は隠しておきたい」そんな、土屋氏の本音が入り混じるほどの、現地に行ったからこそ知れた話や、他では聞けないようなマニアックなことなど、大変充実した内容となっている。噂を聞きつけて、一般の参加者以外にも、「土屋さんの話を聞きたい!」と、プロの方も参加されている。

チョコレート好きがもっと増えて、ここは集える場所に

最後に、カカオストアの今後についてはどのようにお考えなのかを伺った。

「カカオストアブランドのチョコレートの種類は、年々増えています。最初は4種類から始まり、今では10種類近くまで増えました。けれど実際には、同じ産地であっても、パーセンテージの違いや、ミルクやブラックもありますので、ひとつの産地に5、6種類もあることになり、正確には50種近くのラインナップが揃っています。さらに、他社のチョコレートもお店ではセレクトして販売いるので、かなりの数になりますね。中には、一度売れたらそれきりのレア商品もあります。その移り変わりも楽しんで欲しいと言いますか、来店するたびに新しい出会いがあることを、楽しんで欲しいですね。」


「近いうちに、”チョコレートバー”をやりたいなと考えています。夜、お酒を飲みながらチョコをつまみに、チョコレート好きが集まり話をするみたいな空間を作りたいです。。引き続き、ワークショップやセミナーも積極的に開催して、皆さまと直接お会いしながらチョコレートの魅力を伝えて行きたいですね。」

足を運ばなくても、あらゆる情報が手に入る時代。だからこそ、人と人とのコミュニケーションや触れ合うことの価値が上がっている、とも感じる。目を見て交わす言葉の中で得るものは、ネットだけでは叶わない。

土屋氏からは、チョコレートの魅力だけではなく、楽しい人生の歩き方も教えてもらえる。そんな土屋氏の想いを凝縮したお店「カカオストア」へ、ぜひ一度、足を運んでみてはいかがだろう。

[box title=”店舗情報” box_color=”#c30d23″]店名:CACAO STORE(カカオストア)

住所:東京都渋谷区富ケ谷1丁目6−8

営業時間:
月曜~木曜・日曜・祝日 11:00~20:00(L.O.19:00)
金曜・土曜・祝前日   11:00~21:00(L.O.20:00)

web site:https://www.theobroma.co.jp/shopbrand/cacaostore/
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[gmap address=”東京都渋谷区富ケ谷1丁目6−8 CACAO STORE”]

チョコレートのために生きる人生 |テオブロマ 土屋公二氏

東京 渋谷・富ヶ谷 千代田線 代々木公園駅から数分歩いたところに店舗を構える”ミュゼ ドゥ ショコラ テオブロマ”。

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テオブロマとは、チョコレートの原料であるカカオの木の名前に由来しており、ギリシャ語では”神様の食べ物”という意味をもつ。チョコレート専門店として、20年近く運営しているテオブロマは、当時まだまだ日本にはチョコレートが普及していなかった頃に本格的なチョコレートを提供しチョコレート愛好家の間で人気となった。

今回紹介したいのは、テオブロマのオーナーである土屋公二(つちやこうじ)氏の創業から20年近くカカオに向き合ったストーリーである。

体調をきっかけに始まる菓子職人としての人生

「高校卒業して、最初のキャリアはスーパーに入りました。そこで、椎間板ヘルニアになって体を壊してしまい辞めることに。当時は19歳、違うことにチャレンジしようと、パティシエというよりは洋菓子職人になろうと決心をして地元清水のケーキ屋で働くことになりました。」

「地元の清水のケーキ屋で働き始め2年経ったところで、フランスに行きました。よく修行、修行って言うのですが、フランスに行った理由も、別にそんな自分のお店を開くといった野望や大それた気持ちは無かったです。」

「修行というと僕の中ではお坊さんの出家みたいなイメージ何ですけど、そんなことはなく、もっと軽い気持ちでした。当時は、日本の高級フランス菓子でショートケーキが売っているようなことが普通で『本当にショートケーキがフランスの高級菓子店に売ってるのかな』っとふと疑問に思ったんですよね。当然、フランスではショートケーキは売ってないんですよ。だって、ショートケーキは日本のものですから。」

「高級フランス菓子ってどういうものなのか、それを自分の目で見てみたいと思いフランスに行きました。今となっては想像もつかないと思いますが、当時は正式に働くすべがなかったんですよね。今のようにビザを取るとか、そういうことが整備されていない時代。フランスに行ったという情報も、今のようなインターネットで簡単に海外に行ける時代ではないので、なんかもぐりで行った人がいたとか、そういう話を聞くぐらいの情報しかありませんでした。」

「ちゃんと正式に向こうに滞在したいということで、就労ではなく学生ビザをとって行きました。ちゃんと手続きをして、学生として3ヶ月フランス語を学ぶ、それで3ヶ月で日本に帰って来ればいいや、というような軽い気持ちでした。」


*テオブロマ チョコレート”じゃり”

「結果的には、そこから6年間、日本に1度も帰らずにいました。3ヶ月経って、言葉が少し分かって生活に慣れてくるともうちょっといたいなって思うようになり、また、働けるお店を紹介してくれる話もあったので滞在することに。小さな町のパン屋から始めて7軒ぐらいのお店を転々とする形。結果的に勉強する形になったので、修行という感じではなかったです。」

町のケーキ屋から有名店で学んだ大切なこと

「7軒を回る中で、フランス菓子を勉強するのには適した店ではないところもありました。でも、地域に住む人にとってみれば大事なお店だったかもしれないですね。駄菓子屋的な店も大事じゃないですか。僕が子どもの頃とか、1個5円とか10円で売ってくれる駄菓子屋があって、世の中にとっちゃどうでもいいけど、子どもにとっては大事な店です。」

「一番最初行った店っていうのは、そんな本当に名もないパン屋だったんですけど、すごく人がやさしくて、そこで日常会話を学んだと思います。おじさんが競馬を聞きながらパンを作ってるのですが、毎回負けるんですよね。仕事中、4時か5時ぐらいにわーっと盛り上がって、『ああ、今日負けた』『いけいけいけ、あー、駄目だった』みたいな。その中で、別にお金はもらわず、シャワーだけ浴びさせてもらって、パンを1個もらって帰ってくるような生活をしてたんですね。」

「そういう店もあったし、三ツ星レストランで働くこともあった。あとは今では日本でも有名なショコラトリーやパティスリーで働くこともできました。チョコレートだったらここの店、ケーキだったらあの店っていうような時代で、そういった当時のトップの店から町の小さなお店で働けたことは大きいと思います。というのは、言うことが全部違うわけですよ。例えば町のケーキ屋に行ったら、いかに安い材料でいかに大きく作るか、そういう事を学ぶんですけども、有名な店になると裕福なお客さんしかこない。裕福な人にとって値段はいいから、一番いい材料を使って、小さくて、豊富にフルーツを盛るとか、そういう事が大事になってくる。」

「それはどちらも正解で、不正解ではないんですね。要するに、出すお店によって違う。北海道の山の中で高級品作っても、お客さんは来ないじゃないですか。やっぱり東京の一等地でやるのに、一番安い材料でやっても、お客さんは納得しないっていう事です。”場所によって使い分けるという事”。自分はどの生き方をしなきゃいけないかっていう事も学びました。その両方を学べたことはすごく大きかったかなと。」

日本へ帰国、雇われとして働くことに

「27歳のちょっと手前で帰ってきたんですけど、そのときに日本ではバブルの絶頂期だったんですよ。実は僕はバブルの間フランスにいたのでバブルを知らないんです。景気が上る感じが分からず、多分帰ってきたときは絶頂期で、気が付いてないんですよね。」

「日本にはDCブランドの会社が代官山でケーキ店をやっていて、そこの社長に『うちに来てくれ』って言われて帰国しました。まあまあ給料もそこそこもらって、代官山でシェフとして3年ほど働いてたという感じ。その後、フランスで修行してたときの親方が、日本に支店を出すから、『お前がシェフをやらないか』って話があり、チョコレート専門店のシェフとしてやることになりました。当時の時代背景が大きく、その頃にバブルが弾けるわけですよ。そうすると、売上が下がるんですよね。私が始めたチョコレートの事業っていうのは、新規事業なので伸びていくんです。でも、会社全体の売上は下がっていくんですね。」

「常に世の中は上に行くんだ、ということが逆転して、もう経済がぐちゃぐちゃになっていく。給料が下がるとか、そういう現象が起こってくるんですね。私としては納得いかないというか、自分の事業は伸びていって、売上も上がっていくのに給料が伸びない。その頃、自分は何のために生きてるっていうのだろうとか、自分は何ができるんだろうとか考えるようになりました。もっと言うと、雇われてるっていうことは楽なんですよね。一方で、友達を見てると、その頃店をやってた人はうまくいってない。若いときは独立するんだってことを簡単に言うけど、ある年齢になると怖くなるわけですよ。」

「結果、自分でやることを選択したんです。結構その頃の決断は大きかったんですよね。会社ってやっぱ圧力あるんです。そこから逃げたい自分がいるんですよ。片や、不安な自分もいる、自分でやれば本当に大変だと。その葛藤があるんですけども、そういうのを全部捨てて、もっと気楽に考えました。人生は1回、好きなことをやってみようと。要するに、会社に行って会社の文句を言うのはやめて、自分でやって、全部の責任は自分にあるんだという考えで、自分の生き方は何かってことを真剣に考えてやると。それで会社を辞めたんです。」

フリーパティシエとしての道に

「会社を辞めて、さっぱりしました、それだけ組織が嫌だったんでしょうね。ただ、うれしかったのは3日間だけ。4日目からどうなるかっていったら、不安になるんです。だって、お金が入ってこないんですから。元々働くの好きな人間だったら、ぼーっとしてられないんですよね。そしたら、電話が鳴ったんですね。」

「『展示会があるから来てくれないか』『講習会の講師をやってくれないか』というオファーで、雇われのときより日銭はだいぶいいですよ。1本の仕事で半月分ぐらいのものをもらえるわけです。これはいいなと思って、それを始めたんですね。そのとき自分で名前を作ったんですけど、名刺に『フリーパティシエ』って書いたんです。」

「ケーキもチョコレートもできるってことで、年齢的にもちょうど良かったんじゃないですか。38歳ぐらいで動けるし、別に高いこと言わないので仕事は増えていきました。ただ、落とし穴があって、忙しいのは春と秋なんですよ。例えば12月、1月とか8月は収入がゼロです。これはやばいなと思っていると、今度は9月、10月になると、ものすごい量の仕事が来るんですよ。そうこうしているうちに、胃潰瘍で血を吐いて倒れちゃったんですよ。すぐ戻って仕事をやりたいと思っていましたが、そのまま入院しました。」

壮絶なフリーパティシエを卒業しチョコレート専門店 テオブロマを開業

「そのとき、決断したんです。もうこの仕事は辞めよう、フリーパティシエっていうのを卒業しよう、と思ったんですね。その頃、家が二子玉川で、青山に顧問先があって、抜け道で今の店の道を通ったんです。それで富ヶ谷の物件を見つけて、でも非常に自分には大きくて似合わない高い物件でした。」

「かなりの金額で、そのときの持ち金は10分の1ですよ。どうしようと思ったのですが、僕の生き方の中に、『何とかなるかな』っていうのがあるんですよ。ないときは頼むんだって、今までの実績の中で、色んな人に頼んでいきました。勿論お金を借りる事もですし、道具屋さんに頼んで後払いにしてもらいました。3カ月経ったらお金何とかなりますよみたいな。」

「お店ができて1年間ぐらいは、お金は自分にはほとんど入ってこないです。お店の卵を食べて、同じ服着て。けれど、今でもその時の決断は間違っていなかったと思います。その時の考えが今の自分の思想にも繋がっています。例えば、信号が変わりそうになったら無理してでも、走ってでも渡ります。間違っても、待ってて、『ああ、赤になっちゃった』はないですね。なぜかっていったら、無理やり行くことによって電車に乗れるけど、待ってたら電車に乗り遅れるでしょ。でも、その電車に乗り遅れることによってチャンスが来ないかもしれないじゃないですか。」

「お店もそうなんですけど、1円でもいいから利益を出せば、ずっと黒字決算ですけど、赤字決算の会社は潰れる方向に向かっていくし、成長はしていかないんですよ。その差っていうのは、信号ピカピカのときに止まるか行くかぐらいの事だと思うんですよね。人間ってほとんど差がないと思うんです。コンクールとか見てても、みんな努力してるんです。でも、ちょっとだけ努力が優った人だけが勝っていくわけです。1999年の3月、テオブロマのお店をオープン。当時は、個人で大きな店をやる人はあんまりいませんでした。そして、チョコレートの専門店を個人でやる人はいなかったわけです。」

「友達の間では、『あいつ、やべえな』『潰れたら誰が拾ってあげんの?』みたいな事を言ってたらしいです。結果、開店時は思った以上にお客さんが来ました。開業後、コンサートのお菓子とか、そういう大きな注文が入ってきて、色んな人のコネクションで何とか切り抜けて、冬を迎えどんどん売れていきました。」

「ちょうど2000年の冬からうちはチョコレートを本格的に始めていくんですけれども、高級チョコレートの日本の幕開けが、私の中では2000年ぐらい。その後、2000年以降にチョコレートのブームみたいなのが来るんですよね。だから、ずっと売上が伸びていって、自分が予想してる以上の会社になってしまったんですよね。」

本格的な手作りのチョコレートを日本に根付かせたい

「店を出したときに考えたのは、やっぱり本格的な手作りのチョコレートを根付かせたい、という事。本当においしいチョコレートを味わって頂きたいっていう事ですね。よくある高級洋菓子店は工場生産品なんです。そうじゃなくて、ちゃんと手作りのおいしいものを作りたいっていう事です。」

「フランスに行った時、パン屋の後に働いたのが今では有名な高級なショコラトリーでした。日本人で初めて働いたわけなんですけども、その時のチョコレートの味が忘れられないですよね。それが自分の人生を変えました。日本では、スーパーで売ってるチョコレートしか食べたことがなかったんだけど、それがフランスに行ったらこんなに美味しいチョコレートがあるのかと。作り手は面白いもので、その美味しいものを作りたいと思うんです。その次に、それを味わってもらいたいと思うわけですよ。なのに、日本に帰ってきたら、その土壌がまだないんですよ。そこにいきなり種まいても無理なんで、たまたま雇われて12年ぐらい過ごすわけですけども、そのときにだんだんバブルが弾けることによって、土壌ができたんでしょう。お陰様で、いろんな人が『チョコレートなら土屋さんね』って言ってくれるんですよ。そこは大きいです。一方で、チョコレートはチョコレートでも実はカカオに興味があるんです。」

カカオの原産地に行き人と関わる人生

「『豆から作らないやつはショコラティエじゃない』とはあるショコラティエが語った言葉です。それは理想的だと思うんですよね。結局、チョコレート専門店といっても原料メーカーのチョコレートを買って作るんですよ。だから、『私が作った板チョコですよ』って言うけど、誰かが作った原料なんです。だから、同じ味のものを他の店も作ることができるのです。ただ、そこにブランドがくっついていたら高く売れるわけですよ。でも、ブランドがくっついているものも、田舎の誰かが作ってるおじさんのチョコレートも、実は一緒の味だったりするんです。一方で豆から作れば、そこに作り手が入るので全然味が変わるのです。だからちょうどお店をつくった頃から、カカオの生産地に行っています。」

「カカオに興味を持っていると言っていますが、実際のところ興味があるのは”カカオを作っている人”ですよ。カカオは、国によって味が違うんですよね。なんでその味なんだろうってときに、普通に考えて品種、気候が要因にありますよ。けれど、カカオの味の違いは、この親父が作ったんだとか、このおばさんが作ったんだ、という”人”によって左右されることが面白い。」

「確かにカカオが違うと味が全く違うんですよ。この国の豆は酸味があったり、最初はミントの味したけど途中からレモンの味に変わる、っていうのが面白いわけですよ。調理していても1回目、何℃で焼いたらこんな味だったけど、温度変えたらこんな味になったよ、っていうのが面白い。また、カカオって1カ月経ったら味変わるんですよね。超面白いですよ。これは作り手しか分かんないですよね。」

チョコレートのために生きていく

「もう決めたんですよ。チョコレートのために生きていくって、決めたんです。一番はそこです。多分ある程度の年齢になって、1つのことをやってると、そこが一番落ち着くんですよね。だから、家でドラマ見ているよりも、チョコレートのことを勉強してるほうがいいんですよ。それに、決めたっていうのは、最終的には人のためになるんですよ。お客さんが喜ぶ笑顔が見たいっていうのはありますよね。だから、自分がアフリカに行って、いいカカオを見つけて、これはいいなと思ったものを修正を重ねて作って、美味しいものを作って。それを買った人から『もう、美味しいわ』って言われたら嬉しいんですよ。それだけですよね。」

「今後の展開としては、会社を大きくする事はないです。逆に、どちらかと言うと小さくしていきたい。チョコレート専門店としてはより個性的な味に向かっていくと思っています。もうこの先はいつ引退するかになってくるので、自分が思い残した事をやりたいっていうのが一番なんですよね。お金でもないし、名誉でもない、自分が最後にやりたい事をやっていくと。その中には、カカオ農園を訪れる事によって、何らかの形の支援をしたいというのも含まれます。」

「お金じゃないんですよ。何らかの形の支援をしたいけど、そこで働く人と話もしたいし、それをみんなに理解してもらって、美味しいチョコレートを提供していくっていうのが一番の使命かなと思うんですね。」

「たまたま私はカカオとかチョコレートとかだったっていう事なんですよ。いろんな形でやりがいを見つけたり、社会に貢献したりする。たまたま自分はカカオとかチョコレートに巡り合って、たまたまそういう立場になっちゃった。そこから逃げたくないんですよね。逃げないで、世の中に為に向かっていかなきゃいけないなって感じます。それは偉そうに言えばそうだし、逆に言えば、それしかできないと思っています。」

テオブロマの店舗紹介

[box title=”お店情報” box_color=”#c30d23″]店名:ミュゼ・ドゥ・ショコラ テオブロマ 本店

住所:東京都渋谷区富ケ谷1-14-9 グリーンコアL渋谷 1F

営業時間:9:30~20:00

定休日:年中無休(年末年始を除く)
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[gmap address=”東京都渋谷区富ケ谷1-14-9 グリーンコアL渋谷 1F”]

[box title=”お店情報” box_color=”#c30d23″]店名:ジェラテリア テオブロマ 神楽坂

住所:東京都新宿区神楽坂6-8 Borgo Oojime

営業時間:10:30~19:30

定休日:月曜、年末年始
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[gmap address=”東京都新宿区神楽坂6-8 Borgo Oojime”]

[box title=”お店情報” box_color=”#c30d23″]店名:ミュゼ・ドゥ・ショコラ テオブロマ 小田急百貨店新宿

住所:東京都新宿区西新宿1-1-3 新宿小田急百貨店 B2F

営業時間:10:00~20:30

定休日:年中無休(百貨店の休日に準ずる
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[gmap address=”東東京都新宿区西新宿1-1-3 新宿小田急百貨店 B2F”]