農園で働く人たちの想いも一緒に届けたい。|チョコレートセレクトショップ カカオストア

「カカオストアは、板チョコのセレクトショップのような場所」そう語るのは、お店のオーナーシェフ、土屋公二氏。本店であるテオブロマ渋谷店から歩いてすぐの場所に、カカオストアはある。店内には土屋氏の言葉通り、数えきれないほどの数の板チョコレートが並び、カカオストアオリジナルはもちろん、海外から買い付けた、板チョコレートも手に入る。

今回はそんなBean to Barの中から3つの商品をピックアップ。さらには、土屋氏が提案するチョコレートの楽しみ方や、カカオストア併設カフェの人気メニュー「トーストショコラ」についても合わせて紹介する。

マダガスカルの新生:MENAKAO(メナカオ)

「『メナカオ』は、マダガスカルのブランドです。マダガスカルのカカオ豆の特徴は、ちょっとベリー系に近い、酸味を感じられるところですね。」

マダガスカルには、2つのチョコレートブランドがあります。1つは、ショコラマダガスカル(写真右、中)
。もう1つが、メナカオというブランド(写真左)で、どちらも本格的な高級チョコレートです。ショコラマダガスカルは昔からあるブランドで、シンプルに、チョコレートだけで楽しみたい方におすすめです。口当たりがとてもなめらかで、人気もあります。メナカオはまだ新生。珍しい具材の組み合わせにトライしているブランドで、ちょっとユニークなチョコレートが揃います。」

カカオストアには、現在7種類のメナカオがある。カカオのパーセンテージ違いや、ヘーゼルナッツ風味のもの、ソルトを使った塩味を感じられるものなどが揃っている。中でも一番気になるのが、「コンババ&ピンクペッパー」だ。マダガスカル産のカカオを63%使用したダークチョコに、ライムの一種であるこぶみかんと、ピンクペッパーが加わる。こぶみかんは、東南アジアが主な原産地の柑橘類の一種である。美容にも良い食材とも言われている。山椒のような、すっきりとした風味が特徴だ。そこへ、ピンクペッパーのピリッとした辛さが加わり、さわやかで、程よくスパイシーなチョコレートに仕上がっている。手に取りやすい価格も嬉しい。現地の人を描いたパッケージも印象的だ。

珍しいホワイトカカオのペルー:CACAOSUYO(カカオスーヨ)

カラフルなパッケージが目を引く「カカオスーヨ」。こちらはペルー北西部にあるピウラ地方が主な産地。

「7年前、初めてペルーに行った時のこと。当時、まだカカオスーヨはできたばかりでしたが、食べて、あまりに美味しくて、『これはぜひ取り扱いたい』と即決。その頃、私自身、ペルーで良いカカオ豆が採れるだなんて知りませんでした。ホワイトカカオというちょっと珍しい種類のカカオなのですが、葡萄のような、豊かな甘みを感じられるのが特徴です。豆自体の香りがとても芳潤、それでいて苦味や酸味は控えめで、気品を感じます。」

ホワイトカカオ自体、とても希少価値が高いのだそうだ。土屋氏はあまりの美味しさに感動し、その後に開催されたパリのサロ・デュ・ショコラへ持参した。するとそこでも高評価を得た。後に日本でも評判となる。ショコラ界では「ホワイトカカオを初めて日本に浸透させたのは、土屋さんだ」と言われている。
また、カカオスーヨの社長であるSamirは、「我々の作るチョコレートを美味しいと褒めてくれたのは、土屋さんが初めてだ。とても感謝している」と喜び、日本でカカオスーヨを取り扱っているのは、テオブロマだけ(カカオストアでも販売)。2人が強い信頼と絆で結ばれている証だ。

ベトナム産チョコレートの最高峰:MAROU(マルゥ)

ヴィンテージ感漂うパッケージの「マルゥ」。なんとこちらのパッケージ、一つ一つ現地で手印刷(プリントスクリーン)されているらしい。種類によって変わるカラーリングにも、きちんと意味がある。ひとくちにベトナム産カカオと言っても、収穫できる地域はトータルして5つほどある。その産地ごとの違いを、色で表現しているのだそう。
マルゥは、ベトナムで出会った、ヴィンセント氏とサミュエル氏の2人のフランス人により立ち上げられた、ベトナム初のBean to Barブランド。使用するのは、ベトナム産のカカオ。ベトナム産チョコレートの最高峰としても、マルゥは知られる。

「ベトナムのカカオ豆はレーズンなどのドライフルーツの香りに近い。香りは強め、それでいて甘さ控えめで”カカオ感”がしっかりあるビターな味わいだから、お酒ともよく合います。」

他のチョコレートと比べても、ベースのカカオがダイレクトに伝わってくるのが、マルゥの特徴。お酒とのペアリングに向き、特におすすめは赤ワインなのだと教えてくれた。甘いものが苦手な方にもおすすめできる。

カフェの人気メニュー:トーストショコラ

程よい食感のバケットに、板チョコを1枚乗せた、大胆かつユニークな「トーストショコラ」。カカオストア内カフェで提供されている、人気メニューだ。

「ぱっと見で、『チョコの方が大きい!』と、インパクトがあって面白いですし、ひとつの演出としても楽しんで頂けるのではないかな、と思います。シンプルですが、上のチョコレートが溶けてしまわないように、ちょうど良いタイミングをはかるのが、実はとても難しいのです。形が崩れないように、けれど食べる頃には溶けるようにと、計算しています。」

トーストの香ばしさに、チョコが濃厚にからまる一品。なお、トーストに使用するチョコレートは、時期によって異なる。定期的に通っては何度も口にしたくなる、至極のトーストショコラだ。

40年の経験が生む、極上のチョコレート

カカオストアに並ぶお店オリジナルのチョコレートたちは、土屋氏自らが、世界各国、いくつものカカオ農園へと足を運び収穫したカカオをもとに、自社で加工からチョコレート製造までの全ての工程を行う、Bean to Barだ。

Bean to Barは、カカオ豆をローストする時の温度や、細部に至るまでの調整など、あらゆる面で時間と手間がかる。しかしその分、繊細な調整が可能となるため、新しい味と出会う偶然も、極めて多くなる。味わいや香り、苦味や甘みなど、よりチョコレートに愛情を込めることができるわけだ。

Bean to Barの中には、様々な食感のお店があるが、土屋氏は「口溶けの良い、なめらかさにこだわる」と話す。しかしその反面で、「『必ずしもこうでなくてはならない』は違う」とも。

「チョコレートを作ること自体を楽しみたいのです。だから、『うちのやり方はこうだ』とか、絶対に固執しない。臨機応変、常に美味しいチョコレートを求めて、材料や製造工程を探究する日々です。チャレンジしたからこそ見える景色を大切にしたい。」

「ちょっと特殊な能力があるんです(笑)。というのは冗談ですが…絶妙なカカオ豆のローストの温度など含め、目に見えるものだけで判断するのではなく、その”裏”にあるものを読むように、じっくりカカオと向き合い、見極めながら製造しています。長年カカオと付き合っているからこそ実感するのは、絶対に数値化できない世界だな、ということ。」

40年以上も、カカオと真っ直ぐに向き合ってきた土屋氏だからこそ、経験の上に成り立つ、研ぎ澄まされた感覚なのだろう。

チョコレートにも物語がある

カカオストアのオリジナルチョコレートのおすすめの食べ方について、土屋氏に聞いてみた。

「基本は自由に食べて欲しい。もしも提案するならば、いくつかの種類の板チョコを買っておいて、例えば休みの日に、ちょっと疲れたなと思ったら一つ口に入れる。コーヒーを飲んで、また一口。なんでもない会話を家族や恋人としながら、また口にチョコレートを入れる。そんな感じで、カジュアルに楽しんで欲しいですね。」

「こんな楽しみ方もひとつ、おすすめしたいな。可愛いパッケージのチョコレートがカカオストアにはいくつもあるでしょ。例えば、恋人が家に遊びに来る。そんな時、おしゃれなパッケージのチョコレートが部屋に置いてあったら、ちょっと素敵じゃないですか。センスの良い魅力的なパッケージを、インテリアとして飾るなんて発想も、良いですね。」

夜のお酒のおつまみに、チョコ、なんていうのも、これまたおしゃれじゃないですか?ただし、後でちゃんと歯を磨いて下さいね(笑)」

土屋氏自身、チョコレート作りを楽しんでいるからこそ、食べる人にも「楽しむことを大切にして欲しい」という思いが伝わってくる。冗談を交えながら話す中、土屋氏はこんな思いも口にした。

「私は一年の間に、6つほどの国のカカオ農家へ足を運んでいます。そこでは、カカオの木の状態を見たり、農園の人たちと会話したりしながら、どんな思いや気持ちがその場所に流れているのか、そこを汲み取っています。私が届けたいのは、良質なカカオだけではありません。農園で働く人たちの想いも一緒に届けたい。」

土屋氏の作るチョコレート、その根底には、関わる全ての人たちの思いがぎゅっと詰まっている。だからこそ生まれる、豊潤で豊かな味わいを、ぜひ一度、体感して頂きたい。

[box title=”店舗情報” box_color=”#c30d23″]店名:CACAO STORE(カカオストア)

住所:東京都渋谷区富ケ谷1丁目6−8

営業時間:
月曜~木曜・日曜・祝日 11:00~20:00(L.O.19:00)
金曜・土曜・祝前日   11:00~21:00(L.O.20:00)

web site:https://www.theobroma.co.jp/shopbrand/cacaostore/
[/box]

[gmap address=”東京都渋谷区富ケ谷1丁目6−8 CACAO STORE”]

kanmi
3時のおやつはかかせない、甘党フリーライター。好物はクラブハリエのバームクーヘン。毎日がほんのりとあたたかくなるような文書をお届けします。