自由が丘で地元の人に愛されるMONT-BLANCのモンブラン。元祖モンブランの秘密に迫る

自由が丘駅正面出口から自由通り方面へ20mほど歩いたところにある「MONT-BLANC」。日本でのモンブラン発祥の店であり「一度食べてみたい」と訪れる人も多い。
自由が丘MONT-BLANCの歴史やモンブランができるまでの秘密に迫った。

「MONT-BLANC」の名前はフランスのモンブラン峰が由来

MONT-BLANCの由来は創業者である迫田千万億氏がフランスのモンブラン峰を訪れたことがきっかけ。
迫田氏はヨーロッパへ行った際にモンブラン峰を訪れ、モンブラン峰を見て感動したのだという。
その感動から、モンブラン峰のあるシャモニーの市長とモンブラン峰のふもとにある「ホテルモンブラン」の社長の承諾と許可を得て、「MONT-BLANC」というお店を立ち上げることとなった。

モンブランの山肌と万年雪を表現した看板商品「モンブラン」

 MONT-BLANCの看板となるお菓子を1つ考案することとなり、その名前の由来であるモンブラン峰をイメージして作ったお菓子がモンブランである。
 MONT-BLANCのモンブランはカステラが使われていることや大きなメレンゲを使っていることも特徴的だ。普通のお店に置いてあるモンブランとは異なる形は、モンブランのお菓子開発の話に繋がる。
 MONT-BLANCの創業当初、実はヨーロッパでもモンブランというお菓子は、ディナーのデザートに出される栗のスイーツでありテイクアウトをするようなお菓子ではなかった。
 迫田氏は、モンブラン峰の万年雪がかかっている姿をイメージした看板商品を作りたいということで、今のようなモンブランを考案した。当時、日本で栗のお菓子は愛されていたことから栗の甘露煮を使ったクリームでお菓子を作り、テイクアウトができるようにカステラでケーキを考案した。テイクアウトをするモンブランの原型とも言えるスイーツを作ったのがMONT-BLANCなのである。
 モンブランを考案した迫田氏は、当時モンブランの商標をとることを考えたが、日本にはまだまだ洋菓子が一般的ではなかった時代の中、広く一般の人たちに洋菓子が広まっていくことを考え商標をとることをやめたのだという。
 私たちが様々な洋菓子店でモンブランを食べられるのは、そういったMONT-BLANCの日本の洋菓子の発展への想いからきているのだ。

美術館のようなMONT-BLANC 東郷青児による絵画はお店の看板に

自由が丘のMONT-BLANCの店舗に入ると大きな絵画が目に止まる。店舗には至るところに絵画があり、まるで美術館のよう。店舗で飾られている絵画は東郷青児氏が全て描いた作品なのだという。
 迫田氏と東郷氏は故郷鹿児島が同じということもあり親交が深かった。
 MONT-BLANC開業当初、まだ無名だった東郷氏がブランドをイメージした作品を描いてくれた頃からお店の看板ともなっている。

老若男女に愛されるお店

 MONT-BLANCのある自由が丘は田園調布や深沢といった住宅地が近く、何世代にもわたって訪れていただいているお客様がいる。MONT-BLANCが支店を出さないことにこだわっているのは地元の人を大切にしたいという想いも込められている。
  MONT-BLANCは、本格フランス菓子を作っているなどといっているわけではなく、むしろ素材も技法も地産地消にこだわっている。ちょっと敷居が高い洋菓子店にしてしまうよりも、地元の人に愛される親しみやすさはお菓子作りの姿勢からも伝わってくる。
  地産地消によって輸送費にかかるコストを削減でき、フレッシュな素材を使うことができる。技法も洋菓子にこだわらず和菓子や料理の技法を駆使していくことで年配の方でもお子様でも安心して召し上がれる。
 その土地に根ざし、何世代にも渡り永く愛されるお店とは、言葉だけではなくお菓子作りの姿勢にも現れてくものだと実感する。

震災をきっかけに変わらない味に新しい風を

看板商品のモンブランは伝統を大切にしレシピを守り続けていたが、東日本大震災をきっかけに少し変化を加えているのだという。
 栗の一番の有名な産地は茨城県。しかし、震災の影響で茨城県産の食べ物を敬遠する時期があり、お客様が安心して食べられるモンブランを提供することを考える必要があった。そこで、全国を回ったところ愛媛県の中山の栗に出会ったという。 すごくおいしい栗であったが、原価を計算したところ原価が非常に高くなってしまった。しかし、美味しい栗をモンブランに使いお客様に届けたいという想いが勝り、スタッフと相談。「これだけ味がよくなれば値段が変わってもお客様は納得されるはず」という結論になり、値上を決断しモンブランに少し変化を加えリニューアルを行った。カステラや生クリームの見直しも行い、レシピは変わらないが、新しい機械を導入することによって、カステラの中で水分が残った状態で粗熱がとれるようになった。生クリームは乳風味が強いけれど口の中に入れてサッと溶けるといった生クリームが実現し、美味しい栗の素材を最大限活かす工夫を加えたのだという。

 震災の背景、素材への想いから栗を変えた事情をお客様に丁寧に説明し、モンブランの売れ行きは変わらないどころか増加。ただ漫然と値上げをするだけではなく、お菓子作りへの想い、お客様に美味しく安全なものを届けたいという想いが届いたエピソードだ。

あくまで支店は出さないが、ネットでも実店舗でも新しい試みを

 MONT-BLANCでは支店を作らないという方針を一貫している。その理由については、食べてくれた人の感動を重視しているからとのこと。
 現在は店舗の裏に工場があるが、どこか別の場所で作って運んだ方が安くできる。しかし、配送ということになってくると開封しても崩れないような工夫や乾燥に耐えられるよう作らなければならない。
 スケールメリットの結果より食べてくれた人の感動を大切にしているからこそ、支店を作らないという方針を貫いている。
 今後もあくまで支店を出す予定はないということだが、最近ではInstagramを通じて商品紹介をしている。

お店情報
店名:MONT-BLANC 東京自由が丘モンブラン

住所:東京都目黒区自由が丘1丁目29−3

定休日:不定休

営業時間:10:00~19:00

kanmi
3時のおやつはかかせない、甘党フリーライター。好物はクラブハリエのバームクーヘン。毎日がほんのりとあたたかくなるような文書をお届けします。