瑞花の作る日本のお菓子で「美味しい記憶」をつくる

新潟を拠点に活動する米菓専門店「瑞花」。国産で高品質なお米を贅沢に使ったおせんべいやおかきは、食感や風味の良さはもちろん、揚げ煎特有の油っこさがないのも特徴。自分用だけではなく、お土産やプレゼントにと、老若男女問わず多くの人から愛されている。

今回は、瑞花の商品の中から4つをピックアップしてご紹介する。あのさくさくの食感はどのようにして生まれるのか。その製作秘話についても、代表の駒形 佳昭氏に伺った。

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創業当時から愛され続ける『うす揚』

創業時から愛され続けている『うす揚』は、極うす生地をさくさくの食感に揚げた、さくっと軽いおせんべい。


定番フレーバーは、「えび」「柚子こしょう」「チーズ」「青のり」の4つ。若い人にも好まれるラインナップが揃っている。また、季節限定フレーバーも登場する。冬には「野菜コンソメ」「和風しょうゆ」。春は「トマトピザ」。夏には「枝豆」と、ちょっとユニークな味の展開に少々驚かされてしまう。ちなみに一番人気は、新潟産の茶豆を練り込んだ枝豆なのだそう。

瑞花のうす揚は、新潟は長岡市にある工場で一つひとつ職人の手で揚げ、味付けはもちろん袋詰めもされている。たっぷりの油で少量ずつおせんべいを揚げるこの手間ひまが生むのは、瑞花ならではの、カリッと軽い食感。「品質にこだわり、丁寧に作りたい」。そんな瑞花の想いを閉じ込めた、瑞花の代表銘菓だ。

うす揚は、どのようにして誕生したのだろうか。駒形氏にお話を聞いた。

「米菓には、中高年のお菓子といった概念や「堅い」といった印象が強くあると私自身が感じていました。それはそれで食べ応えがあって良いのですが、若い方にも受け入れられるようなもっとカジュアルで、軽やかな米菓があっても良いなと思ったのです。知らないうちにどんどん手が伸びてしまって、気づけば食べ切ってしまったというような。」

「瑞花のうす揚の軽やかな食感と、口に入れた時の口溶けの良さは、手で揚げているからこそ実現できるものです。油にさっと通して熱をとり、味付けをします。油っこさがなく胃もたれを起こさないので、年齢問わず食べていただけます。」

瑞花のうす揚は、他のお菓子屋では味わえない、軽やかな食感とこだわり抜いた味付けが特徴である。
見た目はなんの変哲もない煎餅であるが、食べれば食べるほど深い味わいが生まれ、次から次へと口へ運んでしまう。
「止まらなくなる美味しさ」とは、まさにこのこと。

手ごろな内容で販売されているため、自分ようとして手軽に購入できるところも嬉しい。また、いろいろな味が用意されているの
で、詰め合わせてお持たせやハレの日など、特別な日にも喜ばれる。

親しみ感じるシンプルなおかき『古木』

うす揚と同じく、創業当時から作られている『古木』。駒形氏いわく「お米の美味しさを凝縮させたシンプルなおかき」とのこと。おかき特有のしっかりとした堅い食感は食べ応えがあり、噛めば噛むほどにお米の味を感じられる。ほのかな塩味が良い塩梅のアクセントとなっていて、つい手が止まらなくなるほどクセになる一品だ。

「瑞花に限らず、岩塚製菓グループは米のよさがストレートに生きる『素焼きの味』を大切に、味付けではなく素材の良さを生かすという考えです。瑞花の作る米菓は新潟の上質なお米を使っているので、味付けはシンプルにお塩だけで十分美味しくなるのです。むしろ、シンプルな味付けにした方がが素材そのものの良さがちゃんと生きても来るのです。」

商品名の『古木』は、時を経た樹木に似ていることから名付けられたそう。時間とともに味わいを増していく樹木のように、これらからも長く愛され続けることだろう。

懐かしい味としっかり食感『揚大丸』

表面の凹凸と、掌サイズの丸い形をした、甘しょっぱい醤油風味の大判揚げは、食べた瞬間に誰しもがどこか懐かしい気持ちになるはず。

「揚大丸は、甘醤油を国産の高品質なうるち米を使ったおせんべいです。まるで、おもちを砂糖醤油で食べているような味にも似ています。大きくて厚くて、食べた感がしっかりとあるのも特徴です。」

瑞花独自の製法によって作られる揚大丸。表面のひびに甘醤油が染み込み、どこを食べてもしっかりと風味を感じられる。口の小さな女性にとっては、手で割りやすいといった良い面も。個人的には、一枚そのまま思い切り口の中へと頬張り、ざくざくの食感を思う存分楽しみながら食べていただきたい。

”長岡精神”を引き継いだ『米百俵』

一口サイズの落雁『米百俵』は、米菓を専門にあつかう瑞花にとって、少し珍しいとも感じる和のお菓子。寒梅粉(もち米を焼いてつぶした米)と和三盆を混ぜ合わせ、米俵の形に固めて作る落雁は、優しい甘さと軽い口溶けが魅力だ。

実はこの米百俵、もともと、1947年長岡市に創業した「米百俵本舗」が長きにわたり販売していたものを、瑞花が引継いで販売することになったのだそう。この経緯について、駒形氏に話を聞いた。

「米百俵本舗さんがずっと販売していた米百俵を、今から約3年ほど前だったでしょうか。後継者が不在となるタイミングで岩塚製菓グループがブランドを継承し、『瑞花』で販売することとなりました。」

米百俵には、長岡市で長年語り継がれる一つのエピソードがある。

今から約400年ほど前、北越戊辰戦争で焼け野原になった城下町の長岡に、支藩である三根山藩から米百俵が届いた。食べものに飢えた人々は、すぐにでもその米を食べたがったが、長岡藩の大惨事 小林虎三郎は、『この米を、1日か2日で食いつぶしてあとに何が残るのだ。国がおこるのも、ほろびるのも、まちが栄えるのも、衰えるのも、ことごとく人にある。・・・この百俵の米を
もとにして、学校をたてたいのだ。この百俵は、今でこそ百俵だが、後年には一万俵になるか、百万俵になるか、はかりしれないものがある。いや、米だわらなどでは見つもれない尊いものになるのだ。その日暮らしでは、長岡は立ちあがれないぞ。あたらしい日本は生まれないぞ・・・。』と、米百俵を売却し、国漢学校を明治3年6月15日に坂之上町(現:大手通2丁目)に設立する。
通っていたのは長岡藩の子弟だけでなく、町民や農民の子どもたちも多くいたそう。学校では『生徒一人ひとりの個性を大切に育もう』との小林虎三郎の教育方針が一貫されていた。今の長岡の教育の基礎は、この当時に築かれたとも言われており、今もなお「米百俵の精神」として長岡市を支えているのだ。

「米百俵本舗がのれんを下ろすこととなり、『どうにか米百俵を長岡市に残せないか』という経緯の中で、岩塚製菓がブランドを継承することとなりました。しかし、岩塚製菓よりも瑞花の方が相性が良いのでは、との流れで販売を引き継ぐ形になりました。」

こうして、長岡に古くから残る歴史ある和菓子「米百俵」は、無事に後世へ残せることとなった。米百俵継承のため、加工するための機械や職人を採用し、製法技術を米百俵本舗から受け継ぎ、基本はそのままに、時代の変化とともに移り変わる人々の味の好みにフィットさせられるよう、甘さを調整しながら“おいしさ”を追求し続けてもいる。

新潟の素材を使い、昔ながらの懐かしさやほっこりする優しい味わいはそのままに、若い人たちにも親しみやすさを感じてもらえるように、ちょっとユニークな商品展開も行っている瑞花。守るべき伝統を大切にしながらも、新しい挑戦を恐れず進化し続けてもいる。そんな瑞花の生み出す美味しいお菓子には、時代や季節の移ろいを感じることのできる情緒的な楽しみがあるようにも思う。実店舗は新潟と東京のみと限られはするものの、オンラインでも購入は可能。自分用にはもちろん、特別な日の贈り物に。ぜひ、瑞花のお菓子で「美味しい記憶」をつくってほしい。

店舗情報
店名:銀座瑞花

住所:東京都中央区銀座7-8-15

営業時間:
平日 11:00~20:00
土・日・祝日 10:00~19:00

定休日:なし

kanmi
3時のおやつはかかせない、甘党フリーライター。好物はクラブハリエのバームクーヘン。毎日がほんのりとあたたかくなるような文書をお届けします。