キャラメルがつなぐ、笑顔の連鎖NUMBER SUGAR(ナンバーシュガー)

子供のころ、友達とケンカした後に食べたおやつの味。悲しい心にそっと寄り添う甘いお菓子は、私の小さく傷ついた心を癒してくれた。それは、大人になっても同じ。仕事のあいまのほんのひと時、甘いお菓子をはさむことで、またちょっと頑張れたりする。

子供のころ、私の小さな手のひらにそっと母が乗せてくれた四角いキャラメル。今回紹介するのは、そんなキャラメルの専門店”NUMBER SUGAR(ナンバーシュガー)”さん。今まで食べたこともないほど濃厚なキャラメルを提供するナンバーシュガーさんにはどんなブランドストーリーがあるのか紹介する。

前原さんと、キャラメルのストーリー

2013年、キャラメル専門店として表参道にオープンしたNUMBER SUGAR(ナンバーシュガー)。キャラメル特有のこっくりとした甘さはそのまま、口当たりの良いすっきりとした後味が魅力だ。

ヴィンテージムード漂うおしゃれなパッケージは、ギフトにも最適。

ナンバーシュガー店主の前原圭輔氏。前職はキャラメルではなく飴職人だったそう。

「20代半ばから約6年間、飴職人として働いていました。ありきたりな言葉かもしれないけれど、”人に喜んでもらえる”仕事がしたかったんです。飴職人として働き始めたのもそんな想いがきっかけでした。人前で飴作りのパフォーマンスをして、それを見てくれる人が喜び、ハッピーになってくれる。それが嬉しかったんです。」

飴職人として人に喜びを与える日々の中、前原さんの中にあるひとつの想いが芽生え始める。

「もっと深い味わいのお菓子を、作ってみたい・・・」

キャラメルとの出会い

「人に喜んでもらいたいという気持ちはずっとありました。何か人を喜ばせれるものを作れたらいいなっていうところを考えていた時、ちょうど飴職人が目の前でパフォーマンスをして、お客さまを喜ばせていました。それが、楽しそうだなと思って飴職人に就くことにしました。」

きっかけは人を喜ばせる仕事をしたいところから入ったが、飴職人として飴作りにどんどんのめり込んででいくことになった。

「飴作りに熱中する中、もっと味わい深いお菓子を作りたいという気持ちが芽生えてきました。形や柄だけでない心の底から優しくできるものを考えていた中で、キャラメルがいいんじゃないかと思ったところが始まりでした。」

生クリームを使って作るキャラメルには、濃厚で深いコクがある。そこから、前原さんは、完全オリジナルの独自のキャラメル作りをスタートさせる。しかしそれは、長く、先の見えない試行錯誤の始まりでもあった。

「キャラメル作りを始めて2年くらいは、ひたすら試行錯誤を繰り返す日々でした。そもそも、キャラメル作りの経験が全くなかった。最初の1年は、何をどうしたら良いのかさえ、全くわかりませんでした。」

「キャラメルは飴と違い、一晩固めて作るんです。だから、前日に作った結果が次の日にならないとわからない。作ってうまくいかないと、前の日に戻って原因を探る、そしてまた作る、これの繰り返しです。一歩進んでまた一歩下がる、みたいな作業を、ずっと繰り返していました。」

「僕、キャラメルが好きじゃなかったんです。」

自分のやっていることが、はたして正解なのか。そんな迷いを抱えながら、おおよそ2年かけ、独自のキャラメルレシピを完成させてゆく。

「実は僕、キャラメルが好きじゃなかったんです。キャラメルの歯にくっつくあの感じとか、食べた後、のどが渇く濃厚すぎる感じとかが苦手だったんです。だからこそ、自分が食べたくなるような理想のキャラメルを作ろうと思ったんです。口溶けが良くて、後味もすっきりするような、想像上のキャラメルが作りたかった。」

そんな理想のキャラメルを追い続け、そして生まれたのが、ナンバーシュガーのキャラメルだった。

「チョコレートやケーキは、研究され尽くしていて、同じようなものを作れたとしても、何が特化できるのかが見えなかったんですね。
ただ、キャラメルに関しては、昔からの馴染みのある味をいかにより美味しく、新しいものにできたらすごく面白いんじゃないかと。」

辛い日々を経験してもなお、変わらぬ想い

長い試行錯誤の日々は、辛いこともさぞかし多かったはず。2年かけ、1から始めたキャラメル作り。そんな日々を振り返ってみて、良かったこと、嬉しかったことは何ですか?そんな質問を前原さんにしてみたところ、返ってきた答えは、ものすごくシンプルだった。

「僕の作ったキャラメルを食べたお客様が、”おいしい”って、言ってくれたこと。」

飴職人を始めたころの前原さんの心は、ずっと変わらず、ここにあったのだ。

ヴィンテージのように、ずっと愛させるお店にしたい

ナンバーシュガーの人気の理由。それは、キャラメルの味はもちろんだけれど、おしゃれなパッケージデザインも大変魅力。

「パッケージはコンセプトに共感していただけるプロの方にお願いしています。」
このコンセプトにも、前原さんなりの店づくりへのこだわりがつまっている。

「まず1つ目に、手作り感とか、ここでしか買えないってことを大事にしたいんです。例えば、花のボックスのスタンプ。あれは、全部自分たちでひとつひとつ押しています。」

「あと、リボンも必ず自分たちで結んでいます。小さなことですが、想いを伝えたいんです。うちのパッケージは、もともとプラスチック系のものを使っていなくて。自然なもので統一し、ほんの少しでも優しい気持ちになってほしいそんな想いもあります。」

「もう1つのコンセプトは、自分自身、ヴィンテージものが好きだってこともあって。ヴィンテージに感じる暖かいイメージだとか、長く残ってきたものであるところとか。キャラメルもそこに通じるところがあると思うんです。古くから日本にあるお菓子だし、年代をこえて愛されてきたもの。そんなある意味”古いもの”を、現代の人にどうやって伝えていくのか。その表現の仕方を探るのが、もう1つのコンセプトです。」

ナンバーシュガーのパッケージには、商品名ではなく数字がデザインされている。

「レシピができた順番で番号がついています。まずベージックなバニラができて、2番目はソルト。そんな感じで。」

NUMBER SUGARの、新しい試み

表参道と言えば、最新のファッションはもちろん、人気の有名スイーツ店も多くある、いわば、ライバル店の多い場所。なぜ、そんな厳しい環境に初めてのお店を出したのか?

「どうせやるならば、あえて厳しい場所で勝負したかった。ファッションだったり、スイーツだったり、表参道は流行に敏感な街。どうせやるなら厳しい環境へ飛び込む。そう決めていました。」

そんな勝負を挑み、スタートしたナンバーシュガー1号店は、着実に人気を得ることとなる。トレンドに敏感な女性たちを中心に話題となり、その輪は、人から人へと連鎖するように広まった。まさにこれは、前原さんが最初に掲げた想い、「人を喜ばせることがしたい。」この想いが連鎖し、現実となる瞬間だった。

ナンバーシュガーは、2018年、新たな店舗を千駄ヶ谷にオープンさせた。

「しっかりと、良いキャラメル作りのできる環境を」そんな想いから、ファクトリー併設店として2店舗目をオープン。キャラメルを作る工程をガラス越しに見ることができるこちらの店舗。店内からだけでなく、外を通行する人も見られるようになっている。職人からするとちょっと気になってしまうのでは?そんなことも含め、千駄ヶ谷店についても聞いてみた。

「飴職人として働いていた頃から、人に見られることが、作り手側のモチベーションに繋がると実感していたんです。目の前で作るどきどき感もあるし、あとは、お客様の安心感も生まれますし。働いている側も、自分たちの仕事を見てもらえるっていうのは働く上で良いことなんですよね。ずっとこもってただ工場に入っているだけよりも、自分たちの仕事を見てもらえることで、モチベーションも上がりますから。」

店の前を通行する人が、ガラス窓の前で思わず足を止め、職人たちの姿に視線を送る姿は、印象的だった。

おいしいがつなげる、しあわせ

ナンバーシュガー立ち上げ前の試行錯誤の日々、そこを含めると約6年間以上もの間、前原さんはひたすらキャラメルと向き合ってきたことになる。辛いことや嬉しいこと、さまざまな経験を得てもなお、変わらぬ想いがある。

「食べた人が「これ、おいしいね」って、素直にそう思ってくれることが、いちばん大切」

美味しいものを食べた時、人は、何の疑問も浮かばずただ「おいしい」と思う。前原さん自身も、このシンプルで素直な気持ちをいちばん大切にしているのだとか。そんな思いから、ナンバーシュガーのキャラメルの素材に対しても強いこだわりをみせる。

たくさんの原材料が溢れている今、保存料を使用すれば簡単に保存期間も伸ばせるのだが、前原さんはどうしても無添加にこだわり続ける。その理由は、「小さなお子様からお年寄りまで、みんなが安心して食べられるものを、ちゃんとお届けしたいから」。

インタビューの最中、前原さんは、何度も同じ想いを口にした。

「人が喜んでくれることが、一番の僕の喜びなんです。」

お店の名前、NUMBER SUGARの”NUMBER(数字)”のように、”1,2,3…..”と、キャラメルが幸せを連鎖させてゆく。それは、ナンバーシュガーのコンセプトでもある『笑顔を広げ、想いを届け、元気を繋げる』にも繋がる、前原さんの想い、そのものだ。

 

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店舗情報
店名:ナンバー シュガー (NUMBER SUGAR)

住所:東京都渋谷区神宮前5-11-11 1F

営業時間:11:00~20:00

定休日:火曜日

kanmi
3時のおやつはかかせない、甘党フリーライター。好物はクラブハリエのバームクーヘン。毎日がほんのりとあたたかくなるような文書をお届けします。