小さな幸せを運んでくれる「空いろ」ならではのほっこり和菓子

東京銀座に本店を構える「空いろ」。街にすっと馴染む上品かつ控えめな佇まいは、130年もの歴史を紡いできた老舗ならではの“引き算の美学“が生み出だす確かな存在感と空間である。

和菓子のベースとなる餡子に焦点をあて、独自の発想によってその可能性を追求することをコンセプトに始まった老舗和菓子店 空也の新ブランド「空いろ」は、9年目に突入した今もなお進化し続けている。どこか懐かしくほっこりさせる定番の和菓子もあれば、食べたことのないような新しいお菓子も揃う。空いろならではのお菓子の魅力。その背景にあるストーリーを辿り、美味しさの理由をひもといた。

和菓子のカナメである餡子に対するこだわり

餡子は和菓子のカナメと言っても過言ではないはず。しかしどこか名脇役なままで主役にはなれずにスポットライトも当たらないまま縁の下の力持ち的存在を貫き通しているようにも感じてしまう。しかし、その名脇役に大胆にもスポットを当てたのが、空いろの創業者、山口 彦之氏である。
山口氏は「空也」5代目としてその長い歴史を受け継ぎつつ、新ブランドの空いろでは今までとは違う切り口で和菓子の魅力を世の中へ発進し続けている。キーとなるのは餡子。こだわりを聞いた。

「空也から新しく生まれた新ブランドとあり、お客さまの中には『空也と同じ餡子なの?』とお聞きになられる方もいますが、空いろが新たに展開するお菓子にフィットする餡子を新たに開発しました。違いは、空也で使うあずきは粒が大きく、砂糖として使うザラメ糖は小さめのものである一方、空いろのあずきは粒が小さく、ザラメの粒は大きい。基本となる素材は同じですが、粒の大きさを変えることによって甘みや舌触りなどが違ってきます」

「味覚に関して言えば、甘みを左右する砂糖の存在は大きいでしょう。粒の大きい砂糖を使うと舌に触れる表面積が小さい粒より広くなり、それによって甘みを強く感じるようになります。あと、砂糖の種類も重要。ザラメを使う理由はグラニュー糖よりもさっぱりとした甘みを表現できるからです。雑味もなくすっきりとした後味の良さを引き立手てくれるのです」

餡子に欠かせない豆にもこだわる。空いろでは、あずきの生育に適していると言われる寒暖差の激しい土地で収穫された北海道十勝産のあずきの他、上品な甘み際立つ白いんげん。きな粉のような香ばしい甘さが魅力であるだいずの3種類を厳選し、独自の製法によってオリジナル餡子が作られている。

和菓子の定番どら焼きにもうひと手間「たいよう」

ころんとした手のひらサイズの「たいよう」は、和菓子の定番品として昔から日本で親しまれて続けているどら焼きを空いろ流に表現したもの。空いろのどら焼きは生地に米粉が使われているため、もちっとした食感が何よりくせになる。

こちらのどら焼きは海外から訪れる方にも人気があるのだそう。その理由はなんと、ドラえもん効果なのだとか。ドラえもんは日本に限らず海外でも数カ国で翻訳されて、その影響もあって「あ!あのドラえもんのどら焼き!」と半ば興奮と喜びの眼差し混じりで購入されていく海外からの旅行客も少なくないのだとか。

生地に米粉を使う理由は、「アレルギーの人にもどら焼きを食べてもらえるように」との思いから。最初は米粉100%で作っていたものの、どうしても小麦と比べて消費期限が短くなることや、気温の変化に弱く、特に冬場になると生地が硬くなってしまうことがネックとなり、今は小麦と米粉をミックスさせた生地へ改良された。米粉が入ることで食感は明らかに小麦だけと比べて違いは明確。まるでクレープ生地に似た食感は和菓子を食べている感覚よりも何か新しいお菓子に出会ったかのよう。

たいようは空いろ誕生とともに歩んできた空いろの定番商品でもある。生地はもちろんサイズや中の餡子に至るまで幾度となく改良を重ねてきた。少しずつブラッシュアップされて今もなお多くの人から愛されている人気商品だ。

餡子の種類は「つぶ」「◯あずき」「◯白いんげん」の3つがありそれぞれに空いろのこだわりと独自の製法技術がきらりとひかる。豆の食感が程よく残る「つぶ」はどこか懐かしい昔ながらの優しい甘さでとても食べやすい素朴な味。スタンダートなどら焼きを楽しみたい方におすすめ。

小豆を皮ごと擦り潰すことで皮と実の間にある旨味を逃すことなく仕上げた『◯あん』がベースとなている「◯あずき」。あずきよりもやや淡白でほのかな甘みを感じることのできる「◯白いんげん」は、こし餡に似たなめらかな口当たりが特徴。小豆の皮にはサポニンという栄養成分も豊富に含まれ、コレステロール低下や血液さらさらなど健康にもアプローチしてくれる嬉しい作用も。小ぶりなサイズは女性にも食べやすく、ちょっとしたギフトにも最適。

多くの人に愛され続けるまあるいルックス「つき」

自分用にはもちろん、お土産として選んで欲しい。そんな思いから誕生した「つき」は、クッキー生地に空いろオリジナルの餡子を組み合わせた和菓子の新しい可能性を感じることのできるお菓子。生地の程よい塩味とバターの風味、そこへ餡子の優しい甘みが合わさる極上の一品。和菓子でも洋菓子でもない空いろ独自の観点によってお菓子の可能性を追求してたどり着いたのがこの「つき」。たいようとともに多くのファンに愛され続けている空いろの人気商品でもある。

プレーンと抹茶の2種類の生地に、それぞれあずきのつぶあんと白いんげんのつぶあんがサンドされ計4通りの組み合わせが定番品として揃う。プレーンはアーモンドの香ばしい風味と餡子のハーモニーが絶妙に響き合い、餡子に親しみのない方でも楽しめる一品。ほのかな苦味のある抹茶のクッキーは品のある大人な味わい。コーヒーと一緒に嗜みたい上品な甘さが魅力の一つとなっている。また、クッキー生地の食感が食べるタイミングによって変化するところも「つき」のユニークなポイント。例えば、出来たてならばサクサクの食感。3日ほど経つと生地に餡子の水分が移行してしっとりと柔らかな食感へと生まれ変わるため自分の好きな食べ頃を探求できるところも「つき」の楽しみ方。

つきはできた当初、プレーン生地に白あんをサンドし大納言がトッピングされた1種類のみしかなかったそう。すると「あずきはないの?」との声が一部のお客さまから聞かれるようになり、抹茶のクッキーもさらに加わり今の形に。ころりとしたまあるいルックスがなんとも愛らしい「つき」。手土産やギフトとしても重宝するはず。

日々の忙しさの中、お菓子を楽しむ時間は安らぎを与えてくれる大切なひととき。手軽に気取らずにカジュアルな感覚で楽しむも良し、ちょっとしたご褒美や手土産にも、空いろの和菓子はシーンを超えて寄り添ってくれる。とっておきのお菓子とともに、ほっと一息つく時間を思い出してみては。

店舗情報
店名:空いろ 銀座金春通り本店

住所:東京都中央区銀座8-7-6 平つかビル1階

営業時間:月~金 11:00~19:00/土 11:00~17:00

定休日:日・祝 定休(別途店休の場合あり)

kanmi
3時のおやつはかかせない、甘党フリーライター。好物はクラブハリエのバームクーヘン。毎日がほんのりとあたたかくなるような文書をお届けします。