製薬メーカーから転身 女性店長が提供する和菓子と日本酒のマリーアージュが楽しめる「薫風」

千駄木駅・団子坂出口から徒歩5分程度の場所にある「薫風(くんぷう)」。エントランスは杉玉とお客様の贈り物の木製の看板が飾られている。
店内に入ると8人ほどが座れる机を中心に、和菓子屋やお酒、お茶が壁に沿って置かれている。


 その中心には”健康”を考えて和菓子を作り続ける、笑顔の可愛い店長のつくだ氏がいる。

 そんな薫風では「和菓子と日本酒のマリアージュ」という珍しい組み合わせをコンセプトとしている。
 これは、元製薬メーカーで研究に従事していたつくだ氏だからできた発想だ。

 今回は、そんな薫風の創業のヒストリーや、つくだ氏が和菓子に掛ける思いなどをご紹介。

”本当の健康を考える”がもたらした転身

 今回ご紹介する「薫風」の店長のつくだ氏は、元々は製薬メーカーで創薬に携わっていた。当初は病気を化学的な反応で小さくする研究、最後は病気と共存していくための研究に関わっていた。

 例えば、お腹が痛い、頭が痛いと感じた時、薬を飲むと痛みが治まるので、この研究自体は私たちの生活には欠かせない。

 しかしつくだ氏は、そもそもお腹が痛くならないためにはどうしたら良いか、慢性的な頭痛はどうしたらなくすことができるのか、という予防の方を考えるようになった。

 確かに、そもそも腹痛や頭痛にならなければ薬を飲む必要はないのだから、健康を考えたときに、”予防”を考えるのはもっともなことだ。

 そこでつくだ氏が目を付けたのが”食”だったのだ。

 「豊かな食べ物だったり、そういう食べるものが手に入る空間にいると、心が落ち着きますし、そういう楽しい場所で、みんなと笑いながら、良いものを食べると、精神的にも良くなって、心や体の健康を保つということにもなってきます。」とつくだ氏は話す。

 そこからつくだ氏のキャリアは大きく変わった。

はじめは製薬メーカーに勤めながら夜間、学校に通う生活が始まった。そこで調理師の免許を取り、退職後、フレンチ・イタリアン・デリ・割烹など、 様々なジャンルで腕を磨いた。

”食”へのこだわり

 薫風で提供される和菓子の原材料は、実際につくだ氏が目で見て確認した物が中心だ。

 原材料にこだわる理由について、つくだ氏はこう語った。

 「例えばわらび餅。実際のところは、それが中国産なのか熊本県産なのか、それの割合が、甘藷・タピオカでんぷんが何%入ってて、本わらび粉は何%なのかとか、詳しいところは一般的には分からない。」

「だけど、私の場合は国産で、自分が根っこから掘ってきたわらびの本物の粉でご提供させて頂いているんです。そうすると、本物を食べたことがある人っていうのと、本物を食べたことがない人が出てくるわけですよね。本物を知っているのか、知らないのかすごく大切です。」

「本物を知っている人は、本物が育つ自然環境がなければいけない、そしてその自然環境を整えてくれていたり、むやみに開発のためにその土地を売らないでいてくれる人がいる、という事を知っている。
 だからそういう人・場所を大切にしなきゃいけない、っていうふうになってくると、自然とこの金額で買わなきゃいけない、その場所にも行ってみたいっていう気にもなります。」

 つくだ氏は食はもちろん、その生産者・生産地のことも非常に考えている。
つくだ氏の”食”へのこだわりは、”アグリツーリズム”にも繋がっているのだ。

 つくだ氏は和菓子の説明と同時に、その生産者の話を沢山してくれる。特に年間通して変わる「どら焼き」のフレーバーには沢山のストーリーがある。

 ぜひ実際に薫風のどら焼きを手に取り、生産者の方とのストーリーについて話を聞いてほしい。

人との繋がりから創業へ

 さまざまなジャンルを経験したつくだ氏は、飲食業の知り合いも多く、知識も豊富だ。商品開発のコンサルタントしても活躍していた時期もある。

 創業のきっかけとなったのも、コンサルタントとしての仕事からだった。

 ある日、つくだ氏はファーマーズマーケットで知り合いの手伝いをしていた。そのブースの隣には、レモンの農家さんが出店をしていた。

 この農家さんが、現在の薫風の看板商品でもある「どら焼き 岩城島のレモンコンフィ入り」のレモンの生産者であり、つくだ氏が創業をするきっかけとなった農家さんだ。

 この農家さんは、愛媛県からレモンを運び、都内のシェフ向けに宣伝に来ていた。しかし、レモンは冬が旬で、夏はカタログでしか宣伝ができない。そのため、うまく宣伝ができないことにこの農家さんは課題を感じていた。

 そんなときに知り合ったのが、商品開発のコンサルタントをしていたつくだ氏だった。そして、開発をしたのが、現在の「どら焼き 岩城島のレモンコンフィ入り」のベースとなるものだった。

 そして、最初の出店場所となったのが、千駄木駅と薫風の間にあるおにぎりで有名な「利さく」だった。

 当時、利さくは喫茶店で、近くにある病院にお見舞いに行く人が、お見舞い用のケーキを購入する場所としても使われていた。その後、後継の際にお店のコンセプトを変え、手作りにこだわるおにぎり屋さんに転身した。そして、お見舞い用のお菓子もケーキではなく、和の物にしたいという話が、つくだ氏がレモン農家さんと知り合った時と同じタイミングで出てきたのだ。

 そこから、創業まではあっという間だった。

 どらやきはお客様からの感想を元に、日々完成度を高めていく。そして評判が広がり、他のお店やネット販売も開始。当時、コンサルタントとしても活躍していたつくだ氏だったが、仕事の幅を和菓子作りに絞り、2012年に薫風を創業したのだ。

“四季”を表現できる和菓子

 つくだ氏はこれまで、フレンチ・イタリアン・デリ・割烹など、様々なジャンルに携わってきた。そんな中でなぜ、和菓子に特化したのかを伺った。

 「私自体がものを立体的に作り上げたり、絵を描いたりするの好きだったので、四季を通して造形をしてみたいと思いました。
 
 和食は、旬の食材を使うことができるので、四季を追うことができます。でも、お肉も扱えます、魚も扱えます、何々も扱えますってなると、それぞれがその分野で1つのカテゴリーを形成することができるほど、すごく深い分野です。

 だから、あまり食材が広がらない、でも、植物性の素材を使って、ある程度の縛りがある世界で出来ることを表現しようと思ったら、和菓子に行きつきました。

 当店のお菓子の基本となる大納言小豆の餡も一年中炊いていますが、新豆と夏を越した豆とでは炊き方や配合を変えています。素材の香りを楽しんで欲しいので、素材を最大限活かすため、手間と工夫を惜しみません。」

 ”四季”を表現したい。この想いは薫風の商品からも伝わってくる。

 看板商品であるどら焼きは、「どら焼き 岩城島のレモンコンフィ入り」は通年提供されているが、そのほかに常時4種類の季節のフレーバーが楽しめる。

和菓子と日本酒のマリアージュ

 薫風の特徴は、お店のコンセプトでもある、「和菓子と日本酒のマリアージュ」からもわかる通り、和菓子と日本酒を一緒に楽しめることだ。

 数ある飲み物の中で、なぜ日本酒だったのかを伺った。

 「日本酒は秋に収穫したお米を、冬に仕込みをし、春に新酒として出てくる。農耕民族の日本人が五穀豊穣の感謝を込めて作った飲み物。
季節を大切にする和菓子との食文化が合っていること、季節で変わる味わいや温度が表現できるのが日本酒だったのです。

 春に出てくる日本酒は、うすにごりでまだ少し若いので、後口に苦味がある。春の山菜も苦味があります。
 夏は水ようかんや葛切りなどのど越しの良いお菓子に加水火入れしてアルコール度数が低いすっきりと飲みやすい日本酒。
 秋は栗とか芋にあわせて加水火入れして夏を越えたひやおろし。
 冬の寒い時期になってくるとおぜんざいやお餅など甘さが濃厚で温かいお菓子に、火入れした原酒をお燗にして。
日本酒は”食”と一緒に四季を表現できるんです。」

 店内には沢山の日本酒が置いてある。どれもつくだ氏が和菓子とのマリアージュを考えて選び抜かれた日本酒だ。ぜひ、つくだ氏おすすめの日本酒と和菓子を楽しんで欲しい。

 もちろん、お酒以外にも四季を感じることのできる飲み物もある。

 中国茶だ。

 中国茶は、体を冷ます効果のある緑茶、一方で体を芯から温める黒茶、利尿作用を促す菊などの花茶など、体調や季節に合わせて選ぶことができる。

和菓子と〇〇の会

 薫風のコンセプトは「和菓子と日本酒のマリアージュ」だが、もちろんビールやシャンパーニュ、ワインと合わせ頂いても楽しめる。

 薫風ではこれまでにお酒を提供しているお店や企業とコラボレーションをし、「和菓子とクラフトビールの会」、「和菓子とシャンパーニュの会」、「和菓子とシェリーの会」などを開催している。

 一見、ミスマッチにも思える和菓子とお酒のマリアージュだが、様々な種類のお酒と一緒に提供をし、評判を呼んでいる。

 実際に取材をさせて頂きた、「酒粕 焼きかりんとう」。これはビールとの相性抜群だ。サイズ感も一口サイズで、かりんとうなのに甘くなく、塩分と黒胡椒がほど良く効いている。一つ食べると、二つ目、三つ目と手が止まらなくなる。お酒のおつまみとして最適だ。

 このコラボレーション以外にも、薫風では毎月「マリアージュの会」を開催している。つくだ氏の和菓子とその和菓子に合うお酒を楽しめる会だ。また、食器も和の物にこだわり、雰囲気も楽しめるひと時となっている。

いかがだっただろうか。つくだ氏の人柄と、和食とお酒を通して四季が味わえる薫風。ぜひ一度足を運んでみて頂きたい。

[box title=”お店情報” box_color=”#003a13″]店名:薫風(くんぷう)

住所:東京都文京区千駄木2-24-5 1F

定休日:月、火(土日不定休)

営業時間: 13時30分~20時00分
[/box] [gmap address=”東京都文京区千駄木2-24-5″]

お酒とのマリアージュが楽しめる 「酒粕 焼きかりんとう」

 今回訪れたのは東京の中でも下町感が残る千駄木駅から徒歩5分ほどのところにある「薫風(くんぷう)」。

 製薬メーカーでの分析や飲食店のコンサル経験、様々なジャンルのシェフ経験のある、笑顔が可愛い店長のつくだ氏が一人で製造から販売まで手掛ける、和菓子とお酒のマリアージュが楽しめるお店だ。

 今回はそんな薫風の中でも特にお酒好きにおすすめしたい「酒粕 焼きかりんとう」についてご紹介する。

和菓子と日本酒のマリアージュ

 薫風のコンセプトは「和菓子と日本酒のマリアージュ」だ。

 つくだ氏に、なぜ和菓子と日本酒のマリアージュをコンセプトにしたのか伺った。

「和菓子と一緒に提供する飲み物として、四季感表すことができるっていうものって、いろいろ考えていったんですけれども、それがやっぱり日本酒だなって。

 日本の食の生活と、気温の変化と伴って飲んでいくことができる。

その変化を楽しんでいくことができるっていうものは、日本酒しか考えられない。」

との回答が返ってきた。

日本酒だけじゃない さまざまなお酒と楽しめる薫風の和菓子

 和菓子とシャンパーニュの会
 和菓子と地ビールの会
 和菓子とクラフトビールの会
 シェリーと和菓子の会

 これは、これまでに店長のつくだ氏が、様々なお酒の名手と手がけてきたイベントの一部だ。

 地ビールやクラフトビールの会は、COEDOビールで有名な朝霧社長と手がけたイベントであることからも、つくだ氏の作る和菓子がいかにお酒とマリアージュするのかが伺える。

 これ以外にも様々なイベントに出店したり、定期的に店舗で和菓子とお酒を提供するイベントを開催しており、取材当日はおすすめの日本酒を提供して頂いた。

創薬の研究者から和菓子作りへの転身

 飲食の世界に入るまでは製薬メーカーで創薬に携わっていたつくだ氏。健康に対しての関心が深く、転身のきっかけも”健康”にあった。
 転身の理由をつくだ氏はこう語る。


 「化学的な処方は、表面的だったりとか、あとは緊急事態的なものでできることだと思うんですね。頭が痛いから鎮痛薬飲むとか。

 でも、なぜ頭が痛いのか、なぜ慢性的にそうなるのかって考えたときに治すなると、やっぱり東洋医学的な考え方っていうんですかね、自分の食生活だったり、睡眠だったりを正していかないと、抜本的には治らなかったりしますよね。

 そう考えたときに、一番関わってるのは”食”だと思いました。それで、その食の部分で何か治療できたり、何か改善できたりしないかな、と思いました。」

 そんなつくだ氏だからこそ思いついた、新しい形の和菓子の楽しみ方があるのだ。

好きなお酒・飲み物と楽しめる

 日本酒を中心に飲み物の提供をしている薫風だが、日本酒以外にもワイン・シャンパーニュ・ビール・和紅茶・中国茶など、お客様の好みに合った飲み物を提供している。

 もちろん、提供する飲み物も健康に良い影響を与えるものが中心だ。

 特に、日本酒以外だと季節に合わせて飲める中国茶を豊富に揃えている。

 「発酵の割合が比較的軽い緑茶といわれている部分は、体を冷ます効果があったり、 プーアール茶は、体を芯から温める効果があったり、菊のお茶は利尿作用を促すので、梅雨の時期や9月の台風の時期に飲むのが良い」

などなど、お茶の説明もしてくれるので、飲む物に困ったら、ぜひつくだ氏との会話も楽しみながら決めてほしい。

 ちなみに取材当日は藤枝の紅茶を頂いた。


 この紅茶は、中国で紅茶の茶葉の栽培技法を30年以上学んだ方のものだった。普段飲む紅茶とは甘味が全く違い、お砂糖を入れなくても少し甘味がし、和菓子と非常によく合う。もちろん、無化学肥料、無農薬。

ビールとの相性抜群「酒粕 焼きかりんとう」

 薫風で提供しているかりんとうは2種類。

 「酒粕 焼きかりんとう」と「醤油粕 焼きかりんとう」だ。

 取材当日は「酒粕 焼きかりんとう」を頂いた。この「酒粕 焼きかりんとう」は一見、かりんとうとは思いもよらない見た目だ。

 一般的なかりんとうは濃い茶色で棒状なのに対し、薫風のかりんとうはボーロのような見た目だ。だが、一口食べると、お酒好きの人はこの形であることに嬉しさ感じるだろう。

 まず、甘くない。そして塩気とピリっとした山椒の風味を感じる。 一つ食べると二つ目、三つ目とと手が止まらなくなるのだ。そして片手にはビールが欲しくなる。一袋に7つ入っているのだが、一瞬にしてなくなってしまった。

 おやつのイメージが強いかりんとうだが、お酒のおつまみにぴったりな一品だ。塩はフランス・ブルターニュの海塩を使用。挽きたての黒山椒があとを引く辛さを与えてくれる。

 かりんとう好きな人にはもちろん、お酒好きの人にもぜひ試して頂きたい一品だ。

一見変わった薫風の「酒粕 焼きかりんとう」を求め、お酒片手に千駄木の街を散歩する週末も良さそうだ。

[box title=”お店情報” box_color=”#003a13″]店名:薫風(くんぷう)

住所:東京都文京区千駄木2-24-5 1F

定休日:月、火(土日不定休)

営業時間: 13時30分~19時00分[/box] [gmap address=”東京都文京区千駄木2-24-5″]

フレンチ、イタリアン、デリ、割烹などを経験した店長が作る「”焼”浮島」

 東京の下町感が残る谷根千エリア。食べ歩きができ、東京の中でも人気のある「谷中銀座商店街」もあり、お散歩に行ったことのある人も少なくないだろう。
 今回はこの谷根千エリアの千駄木駅にある「薫風(くんぷう)」を取材した。
 薫風は「健康」を一番に考えた店長のつくだ氏が、日本の四季を感じて欲しいと考え、考案した和菓子を提供している。
 また、「和菓子と日本酒のマリアージュ」をコンセプトとし、店内で食べる場合はおすすめの日本酒を紹介・提供してくれる。
  今回はそんな薫風のちょっと珍しい「”焼”浮島」についてご紹介する。

生産者の顔がわかる安心感と温かさ

 薫風に訪れるのであれば、ぜひ店長のつくだ氏との会話も楽しんで欲しい。
薫風のお菓子はそれぞれ素敵なストーリーや背景があり、知った上で味わうとより奥深く楽しむ事ができる。
また店内でお菓子を食べる場合はつくだ氏が和菓子に合う飲み物飲みものをおすすめしてくれる。
 提供してくれる飲み物は日本酒をはじめ、ビール・シャンパーニュ・ワインのアルコールから、和紅茶や中国茶など様々だ。
 普段飲めないようなビンテージの飲み物もあるので、何が合うのかぜひつくだ氏に相談してほしい。

 薫風で提供されている和菓子の原材料は、実際につくだ氏が足を運んだり、信頼できる生産者の方からの紹介の生産者が中心だ。
 そのため、一つ一つの和菓子に、心温まるエピソードが沢山ある。

 看板商品となった「どら焼き 岩城島のレモンコンフィ入り」も、つくだ氏の人柄から作られた商品だ。
 レモンの販売は季節が限られているため、なかなか限られた季節以外でその魅力を広めることは難しい。当時、レモンの生産者はそれでもどうにかして自分の農園のレモンの魅力を伝えたいと頭を悩ませていた。
 そんな時、たまたま当時製品開発のコンサルティングをしていたつくだ氏がその農家の方と知り合い、そのレモンをコンフィとして商品化し、広めることに成功したのだ。
 他にもこんなエピソードがある。

つくだ氏の話から始まるアグリツーリズム

 どら焼きのフレーバーの一つに「りんご」がある。

 このりんご農家の方はおばあちゃんで、いつも一つ一つ丁寧にりんごがあたらないように、パッキングをしてくれる。しかしりんごはあたらないのだが、隙間がもったいないと思ったおばあちゃんは隙間にいろいろな果物を入れてくれたそうだ。

 この隙間の果物を使って、つくだ氏は和菓子を作り、お礼として手紙を添えて送る。
そしておばあちゃんからも「頑張りなさいよ」と応援の手紙が送られ来る。なんともほっこりするエピソードだ。

 これを聞いたお客様が、このおばあちゃんに興味を持って農家を訪れる。観光地でもない農家に、人が訪れるようになり、経済が活性化する。一つの和菓子屋さんの人柄がもたらした、アグリツーリズム。

 薫風にはこのような心温まるエピソードが沢山ある。ぜひ一度足を運んでつくだ氏との会話を楽しんで欲しい。

十勝産のあんこをふんだんに使った「”焼”浮島」

 今回取材した焼浮島も、つくだ氏の知り合いの農家さんおすすめの小豆を使って作られている、新感覚の浮島だ。

 一般的な浮島はパウンドケーキのように蒸して作られる。そして食感はあんこなので少しぱさぱさだ。

 一方で薫風の焼浮島は名前の通り焼いて作られている。生地は通常の浮島同様半分以上があんこなのだが、ぱさぱさ感が少ない。

 薫風の焼浮島はぱさぱさ感が出ないようにとつくだ氏が試行錯誤して作られたレシピだ。白胡麻油やラム酒が使われている点が特徴的だ。
 そして、甘さが絶妙なのだ。

 薫風の焼浮島は甘すぎず、「小豆の香りを立たせたい」というつくだ氏のこだわりがある。小豆はしっかり炊くことで、日持ちはするが、香りがなくなってしまう。効率を考えれば、しっかり炊いてしまった方が良いのだが、香りを立たせるため、一年中炊いているそうだ。

 そのおかげもあり、甘すぎず小豆の香ばしい香りが残る。

 さらに上には程よい甘さのイチジクが乗っており、この甘さがさらに焼浮島の甘さを引き立てている。

 薫風では通常の浮島同様、蒸した浮島を野菜シリーズとして提供しているので、ぜひ食べ比べてほしい。

おすすめの食べ方

 この焼浮島とマリアージュさせる、つくだ氏おすすめの飲み物は、「ダルマ正宗」。見た目はウイスキーのようだ。

 このダルマ正宗は新酒の時期を除き、基本的には熟成酒しか出さない蔵で、2~3年寝かせた物ばかりだ。ご提供頂いたお酒は3年物ということもあり、さわやかな味わいだった。おすすめされただけの事はあり、焼浮島とよく合う。

 お酒は年を重ねると深みが出てくるが、年代物に合う和菓子を探すのも薫風
の楽しみ方の一つだろう。

[box title=”お店情報” box_color=”#003a13″]店名:薫風(くんぷう)

住所:東京都文京区千駄木2-24-5 1F

定休日:月、火(土日不定休)

営業時間: 13時30分~19時00分[/box] [gmap address=”東京都文京区千駄木2-24-5″]

薫風創業のきっかけ  どら焼き 岩城島のレモンコンフィ入り

 谷根千として有名な地域の一つである千駄木駅。駅周辺は可愛らしいお店が立ち並び、ちょっとしたお散歩にも最適の街だ。そんな千駄木駅から歩いて5分ほどのところに今回ご紹介する「薫風(くんぷう)」はある。

 薫風は明るく優しい人柄の店長のつくだ氏一人で営んでいる。店内にはイートインスペースもあり、お散歩の休憩にもちょうどよい雰囲気だ。

 今回はそんな薫風の創業のきっかけとなった「どら焼き 岩城島のレモンコンフィ入り」についてご紹介する。

岩城島のレモンとの出会い

 元々は製薬メーカーで分析の仕事に携わっていたつくだ氏だが、健康を食べる物から考えたいと思い、飲食業界に転身をした。

 その後、フレンチ・イタリアン・デリ・割烹など、 ジャンルにとらわれず飲食の世界で腕を磨いた。しかし、食材のルーツからお客様に伝えたいという思いから、「和菓子」のみに絞った。現在は生産者の想いなどを伝える代弁者として、現地に足を運び、土壌や生産工程の確認なども行っている。

 そんなつくだ氏が岩城島のレモンと出会ったのは、青山ファーマーズマーケットだった。つくだ氏は知り合いのブースを手伝っていたのだが、その隣に出店したのが岩城島のレモンの生産者だった。

生産者からの依頼から生まれた「どら焼き 岩城島のレモンコンフィ入り」

 つくだ氏には和菓子を通して、日本の四季を感じてほしいという思いがある。食材は季節によって収穫時期や完熟度が変わるため、薫風では季節に合わせて和菓子に使う材料を変えているのだ。

レモンなどの柑橘類は冬季が収穫時期で夏季に需要があっても提供できない。

 その課題を解消しようと思った岩城島のレモン生産者の方が、当時製品開発のコンサルティングをしていたつくだ氏に、何かこのレモンを広める方法はないか、と相談をしてきた。
 このことがきっかけで、「どら焼き 岩城島のレモンコンフィ入り」の開発が始まったのだ。

おにぎり屋さんの手土産としての「どら焼き 岩城島のレモンコンフィ入り」

 千駄木駅の近くに、土日は行列もできるような人気店のおにぎり屋さん「利さく」がある。大きな病院の多い土地柄、食事と共に病院のお見舞い品として洋菓子を販売していたが病気の方にも安心して召し上がっていただけるお菓子はないかと探していた時に、知り合いだったつくだ氏に相談をしたタイミングと、つくだ氏が岩城島のレモンの生産者と知り合ったタイミングが合い、利さくの手土産として「どら焼き 岩城島のレモンコンフィ入り」の販売が始まったのだ。

噂が広がり、店舗オープンへ

 もともとは利さくの手土産として作られていた「どら焼き 岩城島のレモンコンフィ入り」だが、材料や季節感を大切にしたいというつくだ氏の想いに共感した飲食店やデパートから、つくだ氏の和菓子を自分のお店でも出したいとオファーが来るようなった。
 これまでは利さくのためだけに作っていたのだが、オファーが増えたことにより、2012年5月に創業、同7月に多くの人に期待され店舗オープンを果たした。
 「薫風」という名前は、素材の「かおり」を大切にしたいというつくだ氏の想いと、創業である5月の季節の禅語から付けたそうだ。

「どら焼き 岩城島のレモンコンフィ入り」

 人と人との繋がりが生み出した、「どら焼き 岩城島のレモンコンフィ入り」を実際に店舗で頂いてみた。

店舗で提供されるどら焼きは、下の生地の上に、餡、レモンピールを置き、上の生地は添えるように置かれている。

 実は薫風のどら焼きは、「岩城島のレモンコンフィ入り」以外にも、季節や収穫状況に応じて金柑、オレンジ、サクランボ、りんご、など、定番の岩城島のレモン以外に4種類販売をしている。
 
 そのため、閉じてしまうと中がわからなくなってしまうため、閉じずに提供をしているのだ。

 定番の「岩城島のレモンコンフィ入り」のレモンは、甘味がピークになる2~3月に収穫された物を使用している。餡は控えめな甘さだが、レモンピールを一緒に食べることで、さわやかな甘さが加わり、違う美味しさがある。

 一口目は、王道の美味しいどら焼きだが、二口目はレモンの味が加わり、これまでにない味わいを感じさせてくれる。そして三口目はまた王道のどら焼きに戻り、レモンの味に後ろ髪をひかれる。
 フレーバーが色々あるので、お気に入りをぜひ探して欲しいが、一つ食べると二つ食べたくなるので、複数購入することをおすすめする。

おすすめの食べ方

 薫風には「和菓子と日本酒のマリアージュ」というコンセプトがある。

 店内には10種類以上の日本酒が置いてある。各和菓子に対し、冷と熱燗のおすすめをつくだ氏が教えてくれるので、お酒が好きな人はぜひ試して頂きたい。

 ちなみにどら焼きは、「しっかり目の穏やかな香りの日本酒を。熱燗も。」とのこと。

 日本酒が苦手な方には、和紅茶、中国茶などもあるので、その日の気分に合わせて色々楽しんで頂きたい。

[box title=”お店情報” box_color=”#003a13″]店名:薫風(くんぷう)

住所:東京都文京区千駄木2-24-5 1F

定休日:月、火(土日不定休)

営業時間: 13時30分~20時00分[/box] [gmap address=”東京都文京区千駄木2-24-5″]