フレンチ、イタリアン、デリ、割烹などを経験した店長が作る「”焼”浮島」

 東京の下町感が残る谷根千エリア。食べ歩きができ、東京の中でも人気のある「谷中銀座商店街」もあり、お散歩に行ったことのある人も少なくないだろう。
 今回はこの谷根千エリアの千駄木駅にある「薫風(くんぷう)」を取材した。
 薫風は「健康」を一番に考えた店長のつくだ氏が、日本の四季を感じて欲しいと考え、考案した和菓子を提供している。
 また、「和菓子と日本酒のマリアージュ」をコンセプトとし、店内で食べる場合はおすすめの日本酒を紹介・提供してくれる。
  今回はそんな薫風のちょっと珍しい「”焼”浮島」についてご紹介する。

生産者の顔がわかる安心感と温かさ

 薫風に訪れるのであれば、ぜひ店長のつくだ氏との会話も楽しんで欲しい。
薫風のお菓子はそれぞれ素敵なストーリーや背景があり、知った上で味わうとより奥深く楽しむ事ができる。
また店内でお菓子を食べる場合はつくだ氏が和菓子に合う飲み物飲みものをおすすめしてくれる。
 提供してくれる飲み物は日本酒をはじめ、ビール・シャンパーニュ・ワインのアルコールから、和紅茶や中国茶など様々だ。
 普段飲めないようなビンテージの飲み物もあるので、何が合うのかぜひつくだ氏に相談してほしい。

 薫風で提供されている和菓子の原材料は、実際につくだ氏が足を運んだり、信頼できる生産者の方からの紹介の生産者が中心だ。
 そのため、一つ一つの和菓子に、心温まるエピソードが沢山ある。

 看板商品となった「どら焼き 岩城島のレモンコンフィ入り」も、つくだ氏の人柄から作られた商品だ。
 レモンの販売は季節が限られているため、なかなか限られた季節以外でその魅力を広めることは難しい。当時、レモンの生産者はそれでもどうにかして自分の農園のレモンの魅力を伝えたいと頭を悩ませていた。
 そんな時、たまたま当時製品開発のコンサルティングをしていたつくだ氏がその農家の方と知り合い、そのレモンをコンフィとして商品化し、広めることに成功したのだ。
 他にもこんなエピソードがある。

つくだ氏の話から始まるアグリツーリズム

 どら焼きのフレーバーの一つに「りんご」がある。

 このりんご農家の方はおばあちゃんで、いつも一つ一つ丁寧にりんごがあたらないように、パッキングをしてくれる。しかしりんごはあたらないのだが、隙間がもったいないと思ったおばあちゃんは隙間にいろいろな果物を入れてくれたそうだ。

 この隙間の果物を使って、つくだ氏は和菓子を作り、お礼として手紙を添えて送る。
そしておばあちゃんからも「頑張りなさいよ」と応援の手紙が送られ来る。なんともほっこりするエピソードだ。

 これを聞いたお客様が、このおばあちゃんに興味を持って農家を訪れる。観光地でもない農家に、人が訪れるようになり、経済が活性化する。一つの和菓子屋さんの人柄がもたらした、アグリツーリズム。

 薫風にはこのような心温まるエピソードが沢山ある。ぜひ一度足を運んでつくだ氏との会話を楽しんで欲しい。

十勝産のあんこをふんだんに使った「”焼”浮島」

 今回取材した焼浮島も、つくだ氏の知り合いの農家さんおすすめの小豆を使って作られている、新感覚の浮島だ。

 一般的な浮島はパウンドケーキのように蒸して作られる。そして食感はあんこなので少しぱさぱさだ。

 一方で薫風の焼浮島は名前の通り焼いて作られている。生地は通常の浮島同様半分以上があんこなのだが、ぱさぱさ感が少ない。

 薫風の焼浮島はぱさぱさ感が出ないようにとつくだ氏が試行錯誤して作られたレシピだ。白胡麻油やラム酒が使われている点が特徴的だ。
 そして、甘さが絶妙なのだ。

 薫風の焼浮島は甘すぎず、「小豆の香りを立たせたい」というつくだ氏のこだわりがある。小豆はしっかり炊くことで、日持ちはするが、香りがなくなってしまう。効率を考えれば、しっかり炊いてしまった方が良いのだが、香りを立たせるため、一年中炊いているそうだ。

 そのおかげもあり、甘すぎず小豆の香ばしい香りが残る。

 さらに上には程よい甘さのイチジクが乗っており、この甘さがさらに焼浮島の甘さを引き立てている。

 薫風では通常の浮島同様、蒸した浮島を野菜シリーズとして提供しているので、ぜひ食べ比べてほしい。

おすすめの食べ方

 この焼浮島とマリアージュさせる、つくだ氏おすすめの飲み物は、「ダルマ正宗」。見た目はウイスキーのようだ。

 このダルマ正宗は新酒の時期を除き、基本的には熟成酒しか出さない蔵で、2~3年寝かせた物ばかりだ。ご提供頂いたお酒は3年物ということもあり、さわやかな味わいだった。おすすめされただけの事はあり、焼浮島とよく合う。

 お酒は年を重ねると深みが出てくるが、年代物に合う和菓子を探すのも薫風
の楽しみ方の一つだろう。

お店情報
店名:薫風(くんぷう)

住所:東京都文京区千駄木2-24-5 1F

定休日:月、火(土日不定休)

営業時間: 13時30分~19時00分

本山智男
株式会社SweetsVillage 創業者。 3度の飯よりスイーツが好き。お菓子屋さんの取材を50件以上実施。様々なスイーツの企画にも携わり、スイーツの商品開発などにも携わる。