歴史の重みを感じさせる名古屋の老舗「川口屋」の和菓子

名古屋の老舗和菓子店「川口屋」は、季節を感じる和菓子がたくさん並ぶお店です。どれもおいしいので、人気の商品はすぐに売り切れてしまうことも。和菓子が苦手でも、「ここのはおいしい!」と感じる方が多いそう。今回はそんな川口屋の人気の秘密をご紹介しましょう。

川口屋はどんなお店?

喫茶店文化が発展している名古屋ですが、和菓子どころとしても有名です。そんな名古屋市内には、川口屋のほかにも多くの由緒正しい老舗和菓子店が軒を連ねています。まずはそんな名古屋と和菓子の歴史を紐解いてみましょう。

名古屋の歴史

東海地方の中心都市として知られる名古屋は、江戸時代に尾張徳川家の城下町として発展していました。江戸時代の前にも織田信長や豊臣秀吉など有名な戦国武将が誕生した土地としても名を馳せています。

そんな名古屋の始まりは、熱田神宮にあります。熱田神宮には三種の神器の一つである草薙神剣を御神体としており、1900年以上もの歴史をもっているのです。この熱田神宮を中心に作られた街が名古屋なのです。その後名古屋は、江戸時代には宿場町として繁栄しました。

繁華街として知られる栄のある名古屋市中区は、江戸時代も家康が築いた城下町として栄えていました。現在も商業の中心として栄えています。川口屋が店舗を構えているのも中区です。中区には商業施設だけでなく公園や美術館など文化的な施設も集まっていますので、観光にもうってつけ。名古屋観光のついでに川口屋まで足をのばすのもおすすめですよ。

名古屋の和菓子の歴史

和菓子は、お茶の席でいただく茶席菓子、贈答菓子、大衆菓子に大きく分けられます。日本に当初入ってきたお菓子は、黒砂糖を使った駄菓子のようなものが多かったのだそう。しかし室町時代に入り茶の湯が広まるにつれ、和菓子の技術も発展していったと言われています。

お茶や和菓子というと、まずは京都を頭に思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかし名古屋でも、江戸時代に茶道が広まっていたそう。これは尾張徳川家が茶の湯を好んでいたからだといわれています。

名古屋は江戸時代、尾張徳川家のお膝元として栄えていました。そして肥沃な土地に穏やかな海と食べ物に恵まれていたことから、庶民の暮らしにも余裕があったのだそう。そのため武士だけでなく庶民の間でもお茶を嗜む文化が広まり、それとともにお茶うけとして和菓子も発展したと考えられています。日常の中にお茶やお茶菓子が溶け込んでいたことも、名古屋の和菓子文化の発展に一役買ったのでしょうね。

江戸時代から続く老舗店が名古屋に多いのは、こうした背景があるためなのでしょう。名古屋の喫茶店文化も、こうした歴史的背景により出来上がったとも言われているようです。

川口屋の魅力

名古屋の和菓子店「川口屋」は、1688年に創業した300年以上も続く老舗です。もともとは北区清水町の旧木曽街道沿いに店舗を構えていましたが、1950年に現在の場所に移転したそう。

現在は周囲にたくさんあった和菓子店は閉店してしまい、大きなビルが立ち並ぶなど街の様子は一変しましたが、川口屋は変わらない姿であり続けています。川口屋のある場所は、名古屋市の中心部という賑やかで交通アクセスのよい場所です。そんななか歴史を感じさせるどっしりとした店構えは、異彩を放っています。

川口屋では昔ながらの上品で繊細な味わいの和菓子を作り続けており、名古屋市内の方だけでなく日本全国、海外の方からも人気です。そんな人気店ながら現在も手作りにこだわり続けているところが魅力。

こじんまりとした店内には、定番の和菓子や普段づかいできそうなおせんべい、四季を感じさせる趣深い和菓子など、幅広いラインナップが並びます。用途に応じてぴったりなものを選ぶことができそうですね。

ちなみに季節の和菓子は、およそ2週間ごとに新しい商品が並ぶそう。川口屋の季節の和菓子を見逃したくない方は、このスパンを参考にお店をチェックしてみてくださいね。何度足を運んでも新しい商品と出会えるのは嬉しいポイントですね。なおお店の公式インスタグラムやツイッターでは、新商品が出るたびに紹介していますので、要チェックですよ。川口屋の芸術品のような和菓子たちは、みているだけでワクワクした気分にさせられますよ。

なお店内にはイートインスペースはなくテイクアウトのみとなっています。じっくり商品を選んでくださいね。

「こちらの和菓子を食べて、和菓子に抱いていたイメージが一新した」という声もみられます。長い時間をかけ、伝統を守りつつおいしさを追求してきたからこそ実現できた味わいなのでしょうね。かといって、伝統に縛られているわけではなく、さらなるおいしさを求めて常に変化をし続けているところも川口屋のすごいところ。伝統の作り方を守るよりも変えた方がおいしいと感じたら、柔軟に新しいやり方を取り入れているそうです。ちなみに林修先生も、そんな川口屋の和菓子を「日本で1番おいしい」と大絶賛しているのだそうです。

川口屋の和菓子は大人気なので、特に人気の商品は午前中に売り切れてしまうこともあるそう。お目当ての商品をゲットしたい方は、開店と同時に足を運ぶことをおすすめします。

川口屋の人気定番メニューは?

特別な日のちょっと高級な和菓子から、普段使いの和菓子までさまざまな和菓子が揃う川口屋。そんな川口屋の和菓子の中から、特におすすめのものをご紹介しましょう。

川口屋の「わらび餅」

ぷるんとした食感のわらび餅は、和菓子の定番といってもいいでしょう。いまやコンビニでも手に入るわらび餅ですが、川口屋のわらび餅はそこらのものとは一味違います。

わらび餅には、わらびの根から作られる本わらび粉を使うのが本来の作り方ですが、この本わらび粉は現在なかなか手に入らないのだそう。そのため本わらび粉を使用していないわらび餅が増えています。でも川口屋のわらび餅には本わらび粉を使用しているのだそう。そのため少し黒っぽい色をしています。

本わらび粉特有の粘りが強くなめらかな食感は、コンビニのものでは味わえません。香ばしい香りのきな粉との相性も抜群です。中の餡は粒あんとこしあんの両方が用意されており、好みに合わせて選べるのも嬉しいですね。一度食べたらその美味しさのとりこになりますよ。消費期限は当日中ですので、手土産に利用したい方はご注意を。なお出来上がり時間が毎日異なりますので、お店に行く前に電話での確認をおすすめします。価格は330円です。

川口屋の「水羊羹」

江戸時代の中期に作られたとされる水羊羹。現在は夏のお菓子というイメージが強いですが、当時はおせち料理のデザートとして冬に食されていたそう。

川口屋の水羊羹は、竹筒に入れて作られており高級感のある見た目も人気の秘密です。丁寧にこして作ることで、すっきりとした味わいととろけるような食感に仕上がっています。なお川口屋の水羊羹は夏限定で、1日の販売数も限定されているそう。お早めにお店に足を運んでくださいね。竹のカップ入りが360円となっています。

川口屋の「桜もち」

春の季節の和菓子といえば、桜もちを思い浮かべる方は多いのでは?桜もちは、地域によって形状が異なります。大きく分けると関東地方に多い「長命寺」、関西地方に多い「道明寺」の2種類となります。

関東風の長命寺はクレープのように、あんこを小麦粉などで作った皮で巻いた形状です。この桜もちは、昔長命寺の門番がお寺の前に落ちている桜の葉を塩漬けにして作ったのが始まりだとされています。

一方関西風の道明寺は、道明寺粉で作ったおもちであんこを包んだものです。この道明寺粉は、昔大阪の道明寺で保存食として用いられていたものなのだそうです。

川口屋で提供している桜もちは、関東風の桜もちです。桜の葉の塩漬けを2枚使用しているので、桜の香りや風味を堪能できますよ。なめらかで口どけの良い餡を、お餅で作ったもちもちの生地で包んでいます。

川口屋の「桜重ね」

桜重ねは、春先に登場する商品です。桜の花びらを模したういろう生地のなかに備中餡を入れた大変美しく春らしい和菓子です。備中餡とは白小豆で作ったあんこのこと。一般的に備中餡は、白小豆ではなく白いんげんで代用したものが使われます。というのも、白小豆は栽培が難しいため大変希少なのだそう。そんななか川口屋では、白小豆を使用した本物の備中餡を使用しているのだそうです。本物の味わいにこだわる川口屋らしいですね。餡の中にはアクセントに桜の塩漬けが混ぜ込まれており、春らしい香りや風味も感じられますよ。

川口屋の「若鮎」

春に登場する若鮎は、小さな鮎の形をしたかわいらしい和菓子です。一般的な若鮎には求肥が入っていますが、こちらの鮎の中には道明寺が入っています。生地との一体感が求肥よりも増しており、よりおいしく感じられます。つぶつぶした食感もたまりません。しっとりとした皮の食感と優しい甘さが、あとを引くおいしさです。

川口屋の「水面の桜」

水面の桜は、葛を使用した生地に備中餡を入れたおまんじゅうです。葛のおまんじゅうというと透明な涼やかなものを想像しますが、この和菓子は霞みがかった色合い。これは本葛を使用し、蒸す工程を省いて作っているからなのだそう。このような作り方を、生葛製と呼びます。

半透明の生地のなかにぼんやりと桜の赤い色が浮かび上がる様子は、水面に散った桜の花びらの様子を表しているのだそうです。なんとも風流な和菓子ですね。甘い餡には桜の塩漬けが添えられており、香りや味のアクセントとなっています。

川口屋の「椿もち」

椿もちは、川口屋で冬の時期に販売される和菓子です。この椿もちは、最古の和菓子といわれているのだそう。源氏物語のなかにも、この椿もちが登場しています。ということは、平安時代にはもう椿もちは存在していたということですね。

現在の一般的な椿もちは、椿の葉で道明寺粉で作った餡入りのおまんじゅうを包んだものです。でも平安時代の椿もちは、現在のようなあんこなどはまだなかったため、つたの汁を煮詰めたものを甘みとして使っていたと考えられています。どのような味わいだったのか想像するとわくわくしますね。

川口屋の椿もちは、羽二重餅で作られており艶があり真っ白で、椿の葉の緑がよく映えます。中の餡はこしあんで、なめらかな口当たり。見た目と味、どちらも楽しめる一品です。こちらの値段は320円です。

川口屋の「落葉」

紅葉した落ち葉の変化を表した和菓子です。こなしで作った落ち葉の中には粒あんが入っています。過ぎ行く秋を感じる一品です。値段は320円となっています。

川口屋の「紫陽花きんとん」

紫陽花を表現した繊細な見た目の「紫陽花きんとん」は、美しく淡い色合いのきんとんの中につぶあんと道明寺、しそを混ぜ込んだものを入れています。通常きんとんには餅玉のなかに餡を入れたものを芯に使用しますが、川口屋ではさっぱりとした後味となるようしそと道明寺を使用しているのだそうです。このきんとんは、季節によって見た目も味わいも変化します。季節ごとのきんとんをぜひ食べ比べて味の違いを感じてみてくださいね。

川口屋の「栗粉」

秋の和菓子といえば、栗きんとんは定番でしょう。栗きんとんは蒸してこした栗に砂糖を加え、茶巾絞りにしたもの。しかし名古屋ではこれを「栗粉」と呼んでいるのだそうです。

川口屋の栗粉には熊本県の栗を使用しています。注文とともに栗を絞ってくれるので、できたての風味を堪能できます。

濃厚な栗の味わいとしっとりとしたクリーミーな食感が特徴。口の中に栗の香りが広がり、幸せな気持ちになりますよ。ちなみに川口屋では、「栗きんとん」も提供していますが、こちらはいわゆる茶巾絞りの栗きんとんではなく、芯に道明寺を忍ばせ、栗餡をそぼろ状にして被せたきんとんです。こちらもまた違った味わいを楽しめますので、食べ比べてみてくださいね。

川口屋の和菓子はどこで買えるの?

大人気の川口屋の和菓子ですが、これまでは基本的に店舗での購入のみで、百貨店などへの出店も行なっていませんでした。しかし2020年10月から、一部の商品のみですが「JR名古屋タカシマヤ」でも購入できるようになるそうです。これは嬉しい情報ですね。

また名古屋にある日本茶を味わえるカフェ「茶香丸源」では、厳選した様々な種類の日本茶と川口屋の和菓子をセットで提供しています。上質な日本茶と川口屋の上品な和菓子の相性は抜群です。気になった方は、ぜひこちらのカフェにも足を運んでみてくださいね。

「名古屋に住んでいないから、川口屋の和菓子は食べられない」とがっかりした方もいるのでは?でも新宿高島屋など一部デパートでは、川口屋の和菓子を催事などで特別販売することがあります。ただ頻繁には行なっていませんので、情報をこまめにチェックするようにしてくださいね。また手作りにこだわる川口屋の商品は、数量限定となっておりあっという間に売り切れてしまうことが予想されます。予約分のみで予定数に達してしまうこともあるそうなので、情報を見逃さないよう注意してくださいね。

川口屋の通販は?

川口屋ではオンラインショップなどは用意されていません。でも一部お取り寄せできる商品もあるようです。カキツバタを模した鮮やかな紫色の「唐衣」もその一つ。ただし名古屋からの発送で1日で到着する地域に限定されているとのこと。川口屋の和菓子を味わうには、川口屋の店舗まで足を運ぶのが1番確実ですね。

川口屋の伝統の味わいを体感

川口屋の和菓子は、伝統をしっかり守りつつ新しい作り方を常に模索し進化し続けているところが魅力です。とはいえ洋菓子との融合など斬新なことはせずに、あくまでの和菓子の範疇から逸脱することなく、おいしさを磨き続けているところが素晴らしいですね。川口屋の和菓子を食べると、和菓子のおいしさを再発見できるでしょう。「和菓子は苦手」と感じている方も、ぜひ一度川口屋の和菓子を食べてみてください。和菓子のおいしさに目覚めるかもしれませんよ。

川口屋の店舗情報は?

川口屋は、名古屋市の中心部にあります。市営地下鉄東山線栄駅から徒歩3分、市営地下鉄名城線久屋大通駅からは徒歩4分、名鉄瀬戸線栄町駅からは徒歩6分ほどとアクセス抜群!観光やショッピングの合間などに気軽に立ち寄れそうですね。

なお街中ということもあり、川口屋には駐車場はありません。車で行く場合は、周辺のコインパーキングなどに駐車しましょう。

なお2021年1月現在、コロナ対策のため入店人数を制限しています。購入したい商品を予約することもできますので、事前の予約がオススメです。なおその日に販売される商品は、川口屋の公式インスタグラムとツイッターで確認できます。

店舗情報
店名:川口屋
住所:愛知県名古屋市中区錦3-13-12
営業時間:9:30~17:30
定休日:日曜日・祝日・第3月曜日